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夕貴さんの生きた証

夕貴さんの生きた証

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夕貴さんの両親の啜り泣く声が廊下に響いていた。孫をはじめてその手で抱き締めた夕貴さんの両親は、夕貴さんが被害に遭ったときなんであの時、チャラチャラした格好で遊んでばかりいるからとそういう目に遭った。用心しないあんたが悪い。夕貴をなんで一方的に責めたのだろう。あの子は何にも悪くなったのに。幼い弟たちのことを考えて、私たちの負担を減らすため、専門学校の学費を稼ぐためにガールズバーで懸命にアルバイトしていたのに。夕貴さんの両親はこはるちゃんに頭を下げた。ママに冷たい態度をとってきてごめんなさいねと謝り続けた。
夕貴さんが家族の到着を待っていたかのように静かに息を引き取ったのは、転落事故から翌日の夕方のことだった。
夕貴さんが携帯に残した最期のメッセージを聞いた夕貴さんの両親はその場に泣き崩れた。
真沙哉さんの容疑は殺人罪に切り替えられた。他にも薬事法違反や拉致監禁、強制性交罪等でも取調べを受けることになった。
「しーちゃん、ないてる」
こはるちゃんが背伸びして窓を指差した。
いつの間にか雨が降りはじめていて、窓ガラスに雨粒が雫のように流れていた。


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