110 / 662
いつかあなたが笑ってくれる日が来ますように
いつかあなたが笑ってくれる日が来ますように
しおりを挟む
その時電話が鳴り出した。
「誰からだ?」
「FAXみたい」
「連川さんかな?連川っていうのはお隣さんだ。年一回旅行に行くのに、ご近所さんみんなで毎月積立てをしているんだ。今度行く旅行の行程表をFAXで送るって連絡があったんだ。ん?どうした?」
何枚も送信されてきたものを一目見た瞬間お婆ちゃんが愕然となった。それにすぐに気付いたお爺ちゃんと彼がすっと立ち上がってお婆ちゃんの手元を覗き込んだ。
「こんなことをして。よっぽど暇なんだな」
「自宅だけじゃなくて、なんで固定電話の番号まで知ってるんだ」
彼が悔しさを滲ませ、紙をくしゃくしゃと手で丸めた。
「お爺ちゃん携帯が鳴ってます」
テーブルの上に置いてあったスマホを渡した。
「ありがとう四季くん」
電話の相手はお隣の連川さんからだった。
「なんだって?」
お爺ちゃんの声が驚きのあまり裏返ったのが分かった。
「あなた?」
「ご近所さんみんなのところに今朝から昼に掛けて匿名の電話があったそうだ。一宮の孫の嫁は殺人犯だ。指名手配犯だってな。その証拠に警察が訪ねてきたって。連川さんはたちの悪い悪戯だ。鵜呑みにしないようにって、みんなに説明してくれてみたいだ」
「たちの悪い悪戯ってレベルじゃない」
「そうよ。四季くんが何をしたっていうの」
ごめんなさい和真さん。
お爺ちゃん、お婆ちゃん。
僕と関わったせいで、みんなを不幸にしてしまう。
僕がいなくなれば……そうだよ。最初からそうすれば良かったんだ。
ハンドリムに手を置いてゆっくりと前へ進もうとしたら、
「四季、駄目だ」
彼が両手を広げて前に立ち塞がった。
「誰からだ?」
「FAXみたい」
「連川さんかな?連川っていうのはお隣さんだ。年一回旅行に行くのに、ご近所さんみんなで毎月積立てをしているんだ。今度行く旅行の行程表をFAXで送るって連絡があったんだ。ん?どうした?」
何枚も送信されてきたものを一目見た瞬間お婆ちゃんが愕然となった。それにすぐに気付いたお爺ちゃんと彼がすっと立ち上がってお婆ちゃんの手元を覗き込んだ。
「こんなことをして。よっぽど暇なんだな」
「自宅だけじゃなくて、なんで固定電話の番号まで知ってるんだ」
彼が悔しさを滲ませ、紙をくしゃくしゃと手で丸めた。
「お爺ちゃん携帯が鳴ってます」
テーブルの上に置いてあったスマホを渡した。
「ありがとう四季くん」
電話の相手はお隣の連川さんからだった。
「なんだって?」
お爺ちゃんの声が驚きのあまり裏返ったのが分かった。
「あなた?」
「ご近所さんみんなのところに今朝から昼に掛けて匿名の電話があったそうだ。一宮の孫の嫁は殺人犯だ。指名手配犯だってな。その証拠に警察が訪ねてきたって。連川さんはたちの悪い悪戯だ。鵜呑みにしないようにって、みんなに説明してくれてみたいだ」
「たちの悪い悪戯ってレベルじゃない」
「そうよ。四季くんが何をしたっていうの」
ごめんなさい和真さん。
お爺ちゃん、お婆ちゃん。
僕と関わったせいで、みんなを不幸にしてしまう。
僕がいなくなれば……そうだよ。最初からそうすれば良かったんだ。
ハンドリムに手を置いてゆっくりと前へ進もうとしたら、
「四季、駄目だ」
彼が両手を広げて前に立ち塞がった。
27
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
罪人の僕にはあなたの愛を受ける資格なんてありません。
にゃーつ
BL
真っ白な病室。
まるで絵画のように美しい君はこんな色のない世界に身を置いて、何年も孤独に生きてきたんだね。
4月から研修医として国内でも有数の大病院である国本総合病院に配属された柏木諒は担当となった患者のもとへと足を運ぶ。
国の要人や著名人も多く通院するこの病院には特別室と呼ばれる部屋がいくつかあり、特別なキーカードを持っていないとそのフロアには入ることすらできない。そんな特別室の一室に入院しているのが諒の担当することになった国本奏多だった。
看護師にでも誰にでも笑顔で穏やかで優しい。そんな奏多はスタッフからの評判もよく、諒は楽な患者でラッキーだと初めは思う。担当医師から彼には気を遣ってあげてほしいと言われていたが、この青年のどこに気を遣う要素があるのかと疑問しかない。
だが、接していくうちに違和感が生まれだんだんと大きくなる。彼が異常なのだと知るのに長い時間はかからなかった。
研修医×病弱な大病院の息子
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
グッバイ運命
星羽なま
BL
表紙イラストは【ぬか。】様に制作いただきました。
《あらすじ》
〜決意の弱さは幸か不幸か〜
社会人七年目の渚琉志(なぎさりゅうじ)には、同い年の相沢悠透(あいざわゆうと)という恋人がいる。
二人は大学で琉志が発情してしまったことをきっかけに距離を深めて行った。琉志はその出会いに"運命の人"だと感じ、二人が恋に落ちるには時間など必要なかった。
付き合って八年経つ二人は、お互いに不安なことも増えて行った。それは、お互いがオメガだったからである。
苦労することを分かっていて付き合ったはずなのに、社会に出ると現実を知っていく日々だった。
歳を重ねるにつれ、将来への心配ばかりが募る。二人はやがて、すれ違いばかりになり、関係は悪い方向へ向かっていった。
そんな中、琉志の"運命の番"が現れる。二人にとっては最悪の事態。それでも愛する気持ちは同じかと思ったが…
"運命の人"と"運命の番"。
お互いが幸せになるために、二人が選択した運命は──
《登場人物》
◯渚琉志(なぎさりゅうじ)…社会人七年目の28歳。10月16日生まれ。身長176cm。
自分がオメガであることで、他人に迷惑をかけないように生きてきた。
◯相沢悠透(あいざわゆうと)…同じく社会人七年目の28歳。10月29日生まれ。身長178cm。
アルファだと偽って生きてきた。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる