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守るべき大切な人
守るべき大切な人
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「俺が憎くないのか?」
傷口を軽くぬるま湯で洗い流してから、消毒して包帯を巻いていたら玉井さんにそんなことを言われた。
「俺は真珠を唆し、お前を殺すように仕組んだ。憎くないのか?」
どう答えていいか思案に暮れていたら、また声を掛けられた。
これは神様が与えてくれた試練だ。
決して憎まず、みなに感謝して生きろ。お祖父ちゃんにそう言われたんだもの。
ううん、首を横に振った。
「人嫌いの地竜《ディノン》がお前に心底惚れ込んだ理由が何となく分かったような気がする。さすが、播本の孫、卯月の女房だ」
包帯を巻き終えると玉井さんは背凭れに掛けてあった上着に手を伸ばした。
「玉井さん、待って‼まだ、血が、完全に止まってない」
お願いだから今は動かないで。もう少しじっとしてて。
「播本に『ありとう』って・・・・孫のきみから伝えてくれないか?」
「玉井さん・・・・?」
意味がよく分からなくて首を傾げた。
「毎年、弟の命日に誰かが墓参りをしてくれていた。それが誰か今まで分からなかった。弟は顔に似合わず甘いものが好物だったみたいで、真っ白な箱の中にはいつもアップルパイや甘いお菓子が入っていた。上京したとき伊澤に播本の店に連れていかれて、その時出されたアップルパイを見たとき、墓参りをしてくれていたのは播本だと確信した。それなのに俺は孫である君を殺そうとした。本当にすまなかった」
自分がしたことを責める玉井さん。
後悔しても仕切れないと、両手で顔を覆った。
傷口を軽くぬるま湯で洗い流してから、消毒して包帯を巻いていたら玉井さんにそんなことを言われた。
「俺は真珠を唆し、お前を殺すように仕組んだ。憎くないのか?」
どう答えていいか思案に暮れていたら、また声を掛けられた。
これは神様が与えてくれた試練だ。
決して憎まず、みなに感謝して生きろ。お祖父ちゃんにそう言われたんだもの。
ううん、首を横に振った。
「人嫌いの地竜《ディノン》がお前に心底惚れ込んだ理由が何となく分かったような気がする。さすが、播本の孫、卯月の女房だ」
包帯を巻き終えると玉井さんは背凭れに掛けてあった上着に手を伸ばした。
「玉井さん、待って‼まだ、血が、完全に止まってない」
お願いだから今は動かないで。もう少しじっとしてて。
「播本に『ありとう』って・・・・孫のきみから伝えてくれないか?」
「玉井さん・・・・?」
意味がよく分からなくて首を傾げた。
「毎年、弟の命日に誰かが墓参りをしてくれていた。それが誰か今まで分からなかった。弟は顔に似合わず甘いものが好物だったみたいで、真っ白な箱の中にはいつもアップルパイや甘いお菓子が入っていた。上京したとき伊澤に播本の店に連れていかれて、その時出されたアップルパイを見たとき、墓参りをしてくれていたのは播本だと確信した。それなのに俺は孫である君を殺そうとした。本当にすまなかった」
自分がしたことを責める玉井さん。
後悔しても仕切れないと、両手で顔を覆った。
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