single tear drop

ななもりあや

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ゴメンね

ゴメンね

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「心、余計なことは喋るな」

「余計なことじゃないでしょう」

「お前は黙ってろ!」

普段は子供達や優真くんにすごく優しいのに。声を荒げ険しい目付きで心さんを睨み付ける裕貴さんはまるで別人のようだった。

「助けるのがあと数分遅かったら、未知もおなかの子も、太惺も心望も、紗智も那和も全員助からなかったんだぞ。遥琉だけじゃない。俺も心もいっぺんに大事な家族を失うところだったんだぞ」

裕貴さんの声は震えていた。

「火事に巻き込まれて未知が意識不明の重体だ。その一報を橘から聞いたとき、俺も心も親父も愕然とした。親父は遥琉を怒鳴り散らした。家族を守れないならヤクザなんか止めっちまえってな。俺も遥琉の側にいたら間違いなく掴み掛かって一発ぶん殴っていた」

裕貴さんの隆々とした腕が音もなく伸びてきて。
僕と心さんを包み込むように、優しく抱き締めてくれた。

不思議と嫌じゃなかった。
何でだろう・・・・・
゛家族゛だからかな?

「心、さっきは怒って悪かった。未知、知りたいことが山のようにあるのは分かる。だがな、今は自分の体を労り、おなかの子を大切にしてくれ。頼むから・・・・遥琉と橘のことだ。言うべき時が来たら、ちゃんと未知に説明するはずだ。それまで待ってくれ」

裕貴さんの目蓋は赤く腫れ上がっていた。

「あのね未知。裕貴はね、目に入れても痛くないくらい未知が可愛くて可愛くて仕方ないんだよ」

心さんの言葉に、裕貴さんの肩がびくっと震えたのが分かった。

「あとね、病院に真っ先に駆け付けたのも裕貴なんだよ」

「心それ以上は言うな」

裕貴さんが急にそわそわし始めて。
橘さんが部屋に入ってくると、慌てて腕を離し、何事もなかったように振る舞っていた。
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