single tear drop

ななもりあや

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尽くす愛

尽くす愛

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「ママタン、おちごとおわった?」遥香が元気に駆け込んできた。

「ハルちゃん、パパ達まだ大事なお話しをしているから、ここちゃんの所に帰ろう」

太惺を抱っこした千里さんがそのあとを追い掛けてきた。

「ハルちゃん、パパよりママタンがいい」

橘さんの後ろに隠れると、足にしがみつきぶんぶんと首を横に振った。

「あとは私が面倒をみます。ハルちゃん、一緒にご飯を食べて来ましょう」

「はぁ~~い!」なかなか橘さんを一人占め出来なくて、ブスくれてばかりいる遥香。ニコニコと笑顔を振り撒きながら、仲良く手を繋ぎ、食堂へと向かった。

「未知もお腹が空いただろう。少しだけ食べてきたらどうだ」

僕も彼から離れたくなくて、静かに手を伸ばした。
そっと遠慮がちに指先を彼の指に絡めると、驚いたように一瞬目を見開き、それから嬉しそうに微笑んで、恋人繋ぎしてくれた。

「ちょっと!たいくんが妬いてるわよ。ママはぼくのでちゅって、ねぇ」

「たまにはいいだろう。未知に甘えても」

「たまにはっていつもじゃない」

千里さんに痛いところをつかれ、グーの音も出ない彼。返す言葉もなく黙り込んでしまった。
そんな二人のやり取りを呆気に取られながら見ていた蜂谷さん。何気に千里さんと目が合った。

「いゃぁ~~ん、そんなに見ないで。渋めのダンディーなオジサマに見られたら、アタシ、恥ずかしくてどこを見ていいか分かんなくなっちゃう」

千里さんが甲高い黄色い声を上げた。

「あのな千里・・・・・彼は惣一郎さんの息子の蜂谷だ。マル暴のデカだ」

彼がほとほと困ったようにため息をついた。

「マル暴のデカ?それならちゃんと挨拶しなきゃね」

千里さんが蜂谷さんにつかつかと歩み寄った。

「はじめまして昇龍会・組長補佐の笹原千里です。妹の未知を匿って頂き、何とお礼を言っていいのか・・・・・これからもよろしくね、はっちゃん」

ウィンクをされ投げキスまでされ、返す言葉もなくしばし唖然としていた。
予想していた千里さんとだいぶイメージが掛け離れていたみたいで、かなり驚いていた。
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