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千思万考
千思万考
しおりを挟む阪井組の組事務所に向かう車中でようやく彼と言葉を交わすことが出来た。
タクシーの運転手さんの知り合いの方というのが、千里さんの熱狂的なファンで、昇龍会のダンベイをしている、ある投資会社の経営者の男性だった。
すぐに千里さんに連絡が行き、僕や子供たちが地竜さんに拐われたことがお祖父ちゃんやお義父さんの耳に入った。
「相手はあの黒竜だ。菱沼組だけで敵う相手な訳ねぇだろ。何でもっと早く言わねぇだ。遥琉、聞いてんのか!って親父からすぐに電話が掛かってきて怒鳴られたよ」
ギュッと服を掴んで離さない一太の髪を優しく撫でながら彼が言葉を続けた。
「度会さんにも、知ってて何で黙ってたんだ!と食って掛かった。親だからこそ、身内だからこそ、迷惑を掛けたくなかった。ごめんな未知。危ない目に遭わせてばかりで・・・」
前の座席に座る彼がしゅんと肩を落とし上体を捻り後ろを振り返った。
「遥琉さんが助けてくれるって信じていたから、大丈夫」にこりと微笑んで首を横に振った。
彼の話しでは、お祖父ちゃんがヘリを保有している知り合いに頼み、昨日の夜には組事務所に駆け付けてくれた。
移動中、もしかしたら山形と新潟にいるかも知れない。あそこは九鬼総業の直参だった連中が幅をきかせている。念のため、阪井に頼むか。そう言って阪井組の組長さんに連絡を入れてくれたみたいだった。
「お祖父ちゃんは、阪井組の組長さんとも知り合いだったの?」
「あぁ、そうだ。組長の阪井は上京する度、茨木さんの店に顔を出して色々と相談に乗って貰っていたみたいだ。真面目だけが取り柄で、結婚もせず、若くして亡くなった兄の忘れ形見を一人で育てていた。だから、茨木さんが知り合いの女性を紹介した。女性の夫が、いわゆるストーカーDV夫で、二人の乳飲み子を抱え、夫から逃げ回っていたんだ。相手がヤクザなら手出し出来ないだろうと二人を引き合わせた」
「茨木さんの面倒見の良さは有名だからね」
隣に座る千里さんが、ププッと思い出し笑いをした。
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