single tear drop

ななもりあや

文字の大きさ
上 下
514 / 764
あなたを一生守らせてください

あなたを一生守らせてください

しおりを挟む
エレベーターを下りると遥香がニコニコの笑顔で迎えてくれた。今度は大好きなママたんに抱っこされキャキャと黄色い歓声を上げていた。
一太は度会さんの手をしっかりと握り締め、澄んだ透明な目で、度会さんと柚原さんと立ち話をする捜査員とおぼしき強面の男性をじっと見詰めていた。

「紫さん彼は?」

「あぁ吉崎さんよ。元刑事さん。現役の頃播本さんにえらく世話になったみたいで、度会とも親交があってね、未知さんと子供達の弾よけを二つ返事で引き受けてくれたのよ」

男性は腰を屈めると一太を怖がらせないように笑顔で覗き込んだ。

「おっきいじぃじは好きか?」
「うん!」
「そっか」
「おじちゃんはおっきいじぃじのおともだち?」
「そうだよ。昔、おっきいじぃじに命を救って貰ったんだ。おじちゃんお巡りさんだったのに一太くんのおっきいじぃじに助けて貰ったんだ。だからその恩返しをしに来たんだよ。これからはおじちゃんが一太くんや一太くんのママと妹と弟をこの命に代えても守るからな」
「おじちゃん、いのちはたったひとつしかないんだって。だからだいじにするんだって。パパがいってたよ」
「そうか。一太くんはパパが好きか?」
「うん!このくらいだいすき」
満面の笑みを浮かべ、両手を広げられるだけ広げてみせた。
そんな一太を男性は目を細めて眺めていた。
あどけないその姿になにかを思い出したみたいで、急に涙ぐんだ。

「どうしたのおじちゃん?だいじょうぶ?どこかいたいの?」
一太が心配そうに覗き込むと、

「おじちゃんな嬉しいんだ。一太くんがこんなに大きくなって、素直で優しい子に育ってくれて。昔な、産まれたばかりの一太くんを抱っこして君のママは毎日のように泣いていたんだ。何で赤ん坊が泣いているのか分からない、この先どうやって2人で生きていけば分からない。頼れる親もいない。見えない不安と戦いながらママはたった一人で君を育てたんだよ。だから余計に嬉しいんだ。一太くんや一太くんのママが幸せになって………良かった。本当に良かった」

男性の言葉を聞いてようやく思い出した。そうだ、お祖父ちゃんと一緒に何度も病院に会いに来てくれた人だ。カフェにもしょっちゅう顔を出してくれて…………
あの頃は子育てと生きるのに精一杯で回りを見る余裕なんてなかった。

「吉崎………さん」

「未知ちゃん、声…………良かった。喋れるようになったんだ」

声を掛けると驚いたように目を見張り、大きな体を震わせて涙を流していた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

罪人の僕にはあなたの愛を受ける資格なんてありません。

にゃーつ
BL
真っ白な病室。 まるで絵画のように美しい君はこんな色のない世界に身を置いて、何年も孤独に生きてきたんだね。 4月から研修医として国内でも有数の大病院である国本総合病院に配属された柏木諒は担当となった患者のもとへと足を運ぶ。 国の要人や著名人も多く通院するこの病院には特別室と呼ばれる部屋がいくつかあり、特別なキーカードを持っていないとそのフロアには入ることすらできない。そんな特別室の一室に入院しているのが諒の担当することになった国本奏多だった。 看護師にでも誰にでも笑顔で穏やかで優しい。そんな奏多はスタッフからの評判もよく、諒は楽な患者でラッキーだと初めは思う。担当医師から彼には気を遣ってあげてほしいと言われていたが、この青年のどこに気を遣う要素があるのかと疑問しかない。 だが、接していくうちに違和感が生まれだんだんと大きくなる。彼が異常なのだと知るのに長い時間はかからなかった。 研修医×病弱な大病院の息子

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...