single tear drop

ななもりあや

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紅涙

紅涙

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「痴話喧嘩はそのくらいにしておけ。心望が落ち着いて寝れないだろう」

こんな遅い時間にどこに出掛けるだろう。部屋着からスーツに着替えた彼が姿を現した。
聞きたいことが山のようにあるのに、また置いてきぼりにされるの?不安で胸がいっぱいになった。

「ごめんな未知、緊急事態なんだ」

大きな手が頬をそっと撫でてくれた。

「すぐ帰るから子供達と待っててくれ」

離れていく彼の手を咄嗟に掴んだ。

「一階のテナントに銃弾が撃ち込まれたと弓削から連絡があったんだ。これ以上真沙哉の好きにさせる訳にはいかないんだ」

懇願され本当は離したくなかったけれど、すっと手を下ろした。家族同然の組のみんなと、組を守れるのは彼しかいないもの。

「真沙哉は、大上の弔い合戦をしているんだ。止められるのは俺しかいない。柚原行くぞ。橘、千里、未知や子供達を頼む」

颯爽と歩き出した彼の背中を追って柚原さんが駆け出した。

「ちょうどいい機会だ。森崎にじかに聞いたらいい、橘との関係を」

遥琉さん、余計なことを言わないで。お願いだから波風を立てないで。

「誰にだって言えないことの1つか2つはある」

さっきまで散々焼きもちを妬いていたのに。引き締まった凛々しい顔付きになっていた。
柚原さんのもうひとつの顔、本部長としての顔だ。
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