111 / 799
取り返しのつかない過ち
取り返しのつかない過ち
しおりを挟む
「一太はパパのこと好き?」
秦さんの問い掛けに、一太は満面の笑みを浮かべ、大好き!そう即答した。
「じゃあ、どのくらい好き?」
「えっとね・・・こんくらいだいすきだよ」
一太は小さな手を懸命に伸ばし、広げられるだけ左右に大きく広げた。
それを見た秦さんは目蓋の縁に涙をいっぱい溜めて、鼻を啜った。
「遥琉、私の大事な弟と甥っ子を泣かせたら許さないからね」
「あぁ、言われなくても分かってる」
「お腹の赤ちゃんに焼きもち妬き過ぎないのよ。茨木さんにもね」
「だから、大丈夫だって。多分・・・」
痛いところをつかれて、声が小さくなる彼。
「それなら良かった。未知と一太を絶対に幸せにしてあげてね。守ってあげてね」
涙を堪えて、笑顔で一太の頭を撫でてくれる秦さん。
「おねぇしゃん、またあそぼ」
「うん、そうだね」
一太の屈託のない笑顔に、秦さんの目からは涙が溢れていた。
「あなたが連れ去られた時、一太をいち早く保護したのは私よ。でも、それよりも行動が早かったのは昇龍会だった。父が、龍一家と縣一家の幹部連中に指示をして、あなたを捜したのよ。遥琉も血眼になってあなたのことを必死で捜したのよ。未知、あなたは一人じゃないのよ。父や茨木さん、縣さんら、みんなあなたのことを心から愛してるわ。勿論、遥琉や橘もね。誰からも好かれるあなたが羨ましいわ。幸せになるのよ」
秦さんは涙を拭いながら病室をあとにした。
「那奈!」彼が呼び止めたけど。
「心配しないで。私はそんなに柔じゃないから」
そう強く言い切って、廊下へと姿を消した。
秦さんの問い掛けに、一太は満面の笑みを浮かべ、大好き!そう即答した。
「じゃあ、どのくらい好き?」
「えっとね・・・こんくらいだいすきだよ」
一太は小さな手を懸命に伸ばし、広げられるだけ左右に大きく広げた。
それを見た秦さんは目蓋の縁に涙をいっぱい溜めて、鼻を啜った。
「遥琉、私の大事な弟と甥っ子を泣かせたら許さないからね」
「あぁ、言われなくても分かってる」
「お腹の赤ちゃんに焼きもち妬き過ぎないのよ。茨木さんにもね」
「だから、大丈夫だって。多分・・・」
痛いところをつかれて、声が小さくなる彼。
「それなら良かった。未知と一太を絶対に幸せにしてあげてね。守ってあげてね」
涙を堪えて、笑顔で一太の頭を撫でてくれる秦さん。
「おねぇしゃん、またあそぼ」
「うん、そうだね」
一太の屈託のない笑顔に、秦さんの目からは涙が溢れていた。
「あなたが連れ去られた時、一太をいち早く保護したのは私よ。でも、それよりも行動が早かったのは昇龍会だった。父が、龍一家と縣一家の幹部連中に指示をして、あなたを捜したのよ。遥琉も血眼になってあなたのことを必死で捜したのよ。未知、あなたは一人じゃないのよ。父や茨木さん、縣さんら、みんなあなたのことを心から愛してるわ。勿論、遥琉や橘もね。誰からも好かれるあなたが羨ましいわ。幸せになるのよ」
秦さんは涙を拭いながら病室をあとにした。
「那奈!」彼が呼び止めたけど。
「心配しないで。私はそんなに柔じゃないから」
そう強く言い切って、廊下へと姿を消した。
43
お気に入りに追加
528
あなたにおすすめの小説

その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
桜空
ななもりあや
BL
夢を叶えるためにアルバイトを掛け持ちし学費を貯めている桜空。オフィス清掃の仕事先で運命の出会いを果たすことに
表紙絵は絵師の有田夕姫さん(@yuuki_arita)に描いていただきました。ご縁に深く感謝します

幸せになりたかった話
幡谷ナツキ
BL
このまま幸せでいたかった。
このまま幸せになりたかった。
このまま幸せにしたかった。
けれど、まあ、それと全部置いておいて。
「苦労もいつかは笑い話になるかもね」
そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる