上 下
26 / 56

26

しおりを挟む
確認すると、蒼井からのメッセージの内容はこんな感じだった。


『颯太、今日は無事に帰れた? てか、今何してんの?』


(何してんのって……)


今、俺はネットで ″大人の飲み会″ をしている。

けど、そんな事を蒼井に知られるのは恥ずかし過ぎる。

オンライン・ゲームとかならまだ普通に話題として出せるけれど、オンライン・サロンの中でも ″大人の飲み会″ であり、しかも出会いを目的とした人達も集まるような場所だ。

蒼井に教えて万が一検索でもされたら、俺がそんなところで恋愛について話している事がバレてしまう。

俺は急いで別の報告を考え、蒼井への返信にはこう打ち込んだ。


『無事帰ってるし。今は夕飯食ってるから安心しろ』


これなら蒼井にオンライン・サロンの事がバレる心配もない。

一安心して、俺は再びサロンのチャット画面に切り替える。

と、そのタイミングでKから短い返事がきた。


『ごめん、ちょっと外してた』


やはり、トイレにでも行っていたのだろうか。

俺はKに『気にしなくていいよ』と返した。

それからまた少しして、Kから先ほどの相談内容に対する答えが届く。


『そうそう、これは俺の考えだけど。多分、そいつってSSの事を気に入ってるんじゃないかな。まぁ、俺は自分がそういうタイプだからよく分かるけど、好きな子ほどいじめちゃうんだよ。でも悪気はなくて、なんていうか……いざとなると素直になれない、みたいな?』


(な、なるほど……!)


Kの回答に、えらく納得してしまう。

要するに、蒼井はああ見えて案外不器用なやつなのかもしれない、という事だ。

Kからの回答を元に、少し考えてみる。


(例えば、蒼井が実は俺に好意を抱いていたとして……って!)


よく考えるまでもなく、俺は顔を真っ赤に染め上げた。

Kの言うように、もし蒼井が ″好きな子はいじめちゃう″ というタイプだとしたら、完全に好意を抱いているではないか。

じゃなかったら、あんな風にキスしたりエロい事ばかりしてこないだろう。

それに、ドライヤーで髪を乾かしてくれたり、朝食を用意してくれたり……。

思い返せば、物凄く至れり尽くせりだったし、まるで恋人のような扱いだ。


(そ、そんな……)


さっき来たメッセージだって、俺が無事に帰れたかとか、今何してるのかとか、もはや好意を寄せているとしか思えないメッセージだ。


(いや、マジか……)


『SS? 大丈夫か?』


(あ……)


つい混乱してチャットのやり取りを忘れていた俺は、慌ててKに返事を返した。


『ごめん、大丈夫。ちょっと色々考えてぼーっとしてた』


それから、俺は続けてこう返す。


『今日はありがと。お陰で、ちょっとスッキリした』


するとKからも返事がくる。


『そか、それなら良かった。もう大丈夫?』


『うん、大丈夫! ありがとな。俺、そろそろ落ちるけど、Kは?』


一応、Kにどうするか尋ねると、快く同意してくれた。


『ン、俺も落ちるわ。話聞けて良かった。また話そうな』


やはり、Kはいいやつだ。

若干、女癖は悪そうな印象も受けたけれど、だからといって性格がねじくれている訳ではないのだろう。

俺はKに感謝しつつ、返事を打ち込んだ。


『うん、俺も楽しかった! じゃあ、また』


こうして、俺たちは解散し、その日のサロン交流は終わったのだった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

unfair lover

東間ゆき
BL
あらすじ 高校二年生の佐渡紅はクラスを支配するアルファ性の右京美樹によるいじめを受けていた。 性行為まではいかないが、性的な嫌がらせを中心としたそれに耐え続けていたある日右京美樹が家に押しかけて来て…ー 不快な表現が含まれます。苦手な方は読まないでください。 あくまで創作ですので現実とは関係ございません。 犯罪を助長させる意図もございませんので区別できない方は読まれないことをお勧めします。 拗らせ攻めです。 他サイトで掲載しています。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

五国王伝〜醜男は美神王に転生し愛でられる〜〈完結〉

クリム
BL
 醜い容姿故に、憎まれ、馬鹿にされ、蔑まれ、誰からも相手にされない、世界そのものに拒絶されてもがき生きてきた男達。 生まれも育ちもばらばらの彼らは、不慮の事故で生まれ育った世界から消え、天帝により新たなる世界に美しい神王として『転生』した。  愛され、憧れ、誰からも敬愛される美神王となった彼らの役目は、それぞれの国の男たちと交合し、神と民の融合の証・国の永遠の繁栄の象徴である和合の木に神卵と呼ばれる実をつけること。  五色の色の国、五国に出現した、直樹・明・アルバート・トト・ニュトの王としての魂の和合は果たされるのだろうか。  最後に『転生』した直樹を中心に、物語は展開します。こちらは直樹バージョンに組み替えました。 『なろう』ではマナバージョンです。 えちえちには※マークをつけます。ご注意の上ご高覧を。完結まで、毎日更新予定です。この作品は三人称(通称神様視点)の心情描写となります。様々な人物視点で描かれていきますので、ご注意下さい。 ※誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます。励みになりますです!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

儀式の夜

清田いい鳥
BL
神降ろしは本家長男の役目である。これがいつから始まったのかは不明らしいが、そういうことになっている。 某屋敷の長男である|蛍一郎《けいいちろう》は儀式の代表として、深夜の仏間にひとり残された。儀式というのは決まった時間に祝詞を奏上し、眠るだけという簡単なもの。 甘かった。誰もいないはずの廊下から、正体不明の足音がする。急いで布団に隠れたが、足音は何の迷いもなく仏間のほうへと確実に近づいてきた。 その何者かに触られ驚き、目蓋を開いてさらに驚いた。それは大学生時代のこと。好意を寄せていた友人がいた。その彼とそっくりそのまま、同じ姿をした者がそこにいたのだ。 序盤のサービスシーンを過ぎたあたりは薄暗いですが、|駿《しゅん》が出るまで頑張ってください。『鼠が出るまで頑張れ』と同じ意味です。 感想ください!「誰やねん駿」とかだけで良いです!

本物のシンデレラは王子様に嫌われる

幸姫
BL
自分の顔と性格が嫌いな春谷一埜は車に轢かれて死んでしまう。そして一埜が姉に勧められてついハマってしまったBLゲームの悪役アレス・ディスタニアに転生してしまう。アレスは自分の太っている体にコンプレックを抱き、好きな人に告白が出来ない事を拗らせ、ヒロインを虐めていた。 「・・・なら痩せればいいんじゃね?」と春谷はアレスの人生をより楽しくさせる【幸せ生活・性格計画】をたてる。 主人公がとてもツンツンツンデレしています。 ハッピーエンドです。 第11回BL小説大賞にエントリーしています。 _______ 本当に性格が悪いのはどっちなんでしょう。    _________

処理中です...