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「さっきのって……」

そうか、成瀬の……。

さっきは余裕ありげに振舞っていたけれど、やはり、しっかりと嫉妬していたらしい。

(もう……)

それを言うなら、俺だって。

成瀬に奪われてしまったキスの分以上に、優真とキスしたり、イチャイチャしたい。

(外でイチャつくのは出来ないけど、部屋の中でなら……)

けれど、今から優真が観たい映画も見るし、暫しお預けだろう。

(うぅ、映画も観たいけど、イチャつきたい……)

けれど、それを言うのは恥ずかしくて。

俺はそっと、上目遣いに優真を見上げて言った。

「少しだけ、取り戻せたんじゃね?さっきの分」

「少しだけ、か」

優真は「ふむ」と考える素振りをすると、俺の手をきゅっと握った。

「入って。今日は時間もあるし、まずは映画でも観ながらゆっくりしよう」

「う、うん……っ」

にこりと微笑まれ、俺はイチャイチャ欲求を飲み込むように頷いた。

部屋に入ると、俺たちはいつものリビングの椅子に落ち着いた。

そして、まずはスマホで観たい映画を検索して調べることに。

ちなみに、優真の部屋には小ぶりな液晶テレビがあり、ネットにも繋がっているので、映画鑑賞も可能だ。

優真は素早くスマホ画面を操作すると、目的の映画を探す。

「ええっと……あ、これかな?」

「どれ?」

画面を指さされたので、身を乗り出して覗き込む。

すると、背後で息を飲む音がした。

「……っ」

「え、なに?」

「いや……その、急に近付かれると、なんというか……ドキッとするものだね」

「あ……」

明らかに照れている優真。

そんな顔でそんなことを言われたら、急に触れ合っている腕に意識が集中してしまうではないか。

俺は恥ずかしくなり、さっと優真から離れた。

「っそういう事言うと、変に意識するだろっ!?」

「そうだな……ごめん」

「もー……」

まったく。

キス以上の事だってした事がある相手だというのに、こんなことでまだドキドキするとは。

(まぁ、付き合ってまだ少しだもんな)

すっかり同棲までしてしまっているような状態だけれど、なんだかんだ、俺たちは付き合ってまだ間もない。

(これから、色んな事があんのかな)

なんとなくそんな事を思いながらチラリと隣を盗み見れば、嬉しそうに微笑む優真の姿。

その姿を見るだけで、俺の心はまたホコホコと温まるのだった。

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