【BL】キス魔の先輩に困ってます

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「……っごめん！なんか、無意識に触ってた」

「い、いや、別に……謝んなくていいし」

悪気がなさそうな成瀬に、俺は緩く首を横に振った。

しかし、成瀬は申し訳なさそうにペコリと頭を下げると、「変な事してごめん」と言ってショルダーバッグの中にペンケースをしまい、はにかんでみせる。

「えっと、それじゃあ……もう行くから。あの、サークル活動の邪魔してしまって、すみませんでした」

成瀬が優真とメンバー全員に向かって言うと、女子達が騒ぎ出した。

「ぜんっぜん！良かったら今度、見学に来てね！代表共々、待ってるから♡」

「そうだよ～。忘れ物も見つかったし、良かったね」

「はぁ……♡3人のやり取り見てるだけで癒されたわ」

「イケメンが増員する……だと？」

と、女子達は成瀬を大いに受け入れているようだ。

そして、優真はというと……

「いや、気にしなくて大丈夫だよ。成瀬君、帰り道は気を付けて」

にっこり笑って、手を振る優真。

「はい、それじゃあ……」

やや気まずそうに、教室を出ていく成瀬。

……って、優真が思いっきり成瀬の帰りを促した気がしたのは、俺だけか？

それに、優真は今も、しっかりと俺の肩を抱いている。

俺は一向に構わないけれど、成瀬はどう思ったのだろう……。

（はぁ……今度、成瀬とちょっと話そうかな。このままだと、優真との関係が無駄にこじれそう）

優真はライバル視しているだろうけれど、だからと言って、あまりにもバチバチ戦闘モードでやりあってほしくはない。

もし本当に成瀬が優真の恋敵だとしても、穏便に済ませる事だって、きっと出来るはずだ。

（あ、そういえばランチのお誘いの答え、まだちゃんとしてなかったよな）

そういえばと、昨日のやりとりを思い出す。

（まぁ、昼メシ一緒に食うだけだし、優真の事も少し話せれば……）

本当は行かないつもりでいたのだが、ここはひとまず、事態が悪化しないうちに俺が調整役として間に入るのが良いかもしれない。

そんなわけで、俺は成瀬の誘いに乗る方向で考え始めた。