62 / 175
8
キスとハグは二人の時に
しおりを挟む
「俺は……お、お前の、その、ハグとか、そーいうのを受け止める”役”なんだから、なんかこう……他の奴らより、お前に近い感じの方が、イメージ的にも合ってるんじゃねぇかなっ、て……だから、やっぱお前の言う通り、名前で呼んだ方が、いんじゃねって思って……だっ、だから!イメージの為であって、深い意味とか、無理してるとか、そんなん無いから……!」
……違う。
イメージの為なんかじゃない。
俺はこんな事、言いたい訳じゃなかった。
もっと素直に、”お前にとってもっと特別な存在になりたい”って、ただそれだけを言いたかった。
それでその後は、”よく出来ました”って、褒めて欲しかった。
甘やかされたかった。
もっと言うなら、”嬉しいよ”って言って、抱き締めて欲しかった……
(全然違うじゃん……俺のばか)
俺はすっかり、自己嫌悪に陥ってしまった。
しかし、東条は一人、なにやら大いに納得したようで。
「……ああ、なるほどね!そういう事だったのか……でも、本当に無理はしなくていいんだよ?」
東条は俺がただ単に無理をしていると思っているようで、引き続き俺の顔色を伺っている。
しかも、イメージの為に呼んだというのも、信じたようだ。
(ちゃんと言わなきゃ、また変に話が拗(こじ)れるかも……)
けれど、俺はすっかりタイミングを逃したようだった。
仕方なく、俺はどうにか気持ちを立て直し、そっと振り返った。
「別に……てか、誰だって最初はそういうの、慣れないもんじゃねぇの?○○って呼んでって言われて、すぐに自然と呼べるわけでもねぇだろ。最初は少し……照れが入ったり、するもんだろ」
特に俺は、と、心の中で最後に付け足す。
すると東条は、顎に手を当てて、フム、と考えるポーズをとった。
それから少しして、何かハッとしたように顔を上げる。
「そうか……確かに、そういう過程を経て、そのうち自然と名前で呼べるようになるのかもしれないね。特に陽斗君は照れ屋さんだから……すまない、僕は陽斗君がとても無理をしているように見えて、ただただ負担なのではないかと心配ばかりしてしまった。陽斗君は僕の提案に対して前向きに検討し、勇気ある第一歩を踏み出してくれたというのにね……うんうん。……ふふ、ちょっとこっち、おいで?」
「な、なんだよ……」
ジト目で睨みながも、俺はおずおずと東条の側へ行く。
……違う。
イメージの為なんかじゃない。
俺はこんな事、言いたい訳じゃなかった。
もっと素直に、”お前にとってもっと特別な存在になりたい”って、ただそれだけを言いたかった。
それでその後は、”よく出来ました”って、褒めて欲しかった。
甘やかされたかった。
もっと言うなら、”嬉しいよ”って言って、抱き締めて欲しかった……
(全然違うじゃん……俺のばか)
俺はすっかり、自己嫌悪に陥ってしまった。
しかし、東条は一人、なにやら大いに納得したようで。
「……ああ、なるほどね!そういう事だったのか……でも、本当に無理はしなくていいんだよ?」
東条は俺がただ単に無理をしていると思っているようで、引き続き俺の顔色を伺っている。
しかも、イメージの為に呼んだというのも、信じたようだ。
(ちゃんと言わなきゃ、また変に話が拗(こじ)れるかも……)
けれど、俺はすっかりタイミングを逃したようだった。
仕方なく、俺はどうにか気持ちを立て直し、そっと振り返った。
「別に……てか、誰だって最初はそういうの、慣れないもんじゃねぇの?○○って呼んでって言われて、すぐに自然と呼べるわけでもねぇだろ。最初は少し……照れが入ったり、するもんだろ」
特に俺は、と、心の中で最後に付け足す。
すると東条は、顎に手を当てて、フム、と考えるポーズをとった。
それから少しして、何かハッとしたように顔を上げる。
「そうか……確かに、そういう過程を経て、そのうち自然と名前で呼べるようになるのかもしれないね。特に陽斗君は照れ屋さんだから……すまない、僕は陽斗君がとても無理をしているように見えて、ただただ負担なのではないかと心配ばかりしてしまった。陽斗君は僕の提案に対して前向きに検討し、勇気ある第一歩を踏み出してくれたというのにね……うんうん。……ふふ、ちょっとこっち、おいで?」
「な、なんだよ……」
ジト目で睨みながも、俺はおずおずと東条の側へ行く。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
人体実験サークル
狼姿の化猫ゆっと
恋愛
人間に対する興味や好奇心が強い人達、ようこそ。ここは『人体実験サークル』です。お互いに実験し合って自由に過ごしましょう。
《注意事項》
・同意無しで相手の心身を傷つけてはならない
・散らかしたり汚したら片付けと掃除をする
[SM要素満載となっております。閲覧にはご注意ください。SとMであり、男と女ではありません。TL・BL・GL関係なしです。
ストーリー編以外はM視点とS視点の両方を載せています。
プロローグ以外はほぼフィクションです。あとがきもお楽しみください。]
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる