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第七十四話 担当さんと
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ーー後日。
都内のカフェにて、僕はシグレさんの隣に座り、担当さんこと、エドナ・アロシュに挨拶をする。
「あの、初めまして……僕はシグレさんの家で使用人として働いています、セイラと申します」
そう言ってペコリと頭を下げると、エドナはニッコリと愛想のいい笑みを浮かべて、自分も自己紹介をした。
「初めまして、エドナ・アロシュです。もう三年以上、シグレの担当をさせて貰ってます。よろしくね、セイラ」
「……っはい!」
顔を挙げると、すっと手が差し出されたので、そっと握り返す。
(本当に綺麗な人だな……ていうか、もしかしてエドナさん、α?)
エドナさんの外見は、美しいブロンドの髪に青く澄んだ瞳といった、所謂美人の条件がバッチリ揃っている。
ロングの髪は毛先だけ緩くパーマをかけており、細くくびれた腰元まで伸びていた。
僕はΩな為、αの匂いや雰囲気にはとても敏感だ。
エドナさんから放たれている強いオーラのようなものや、微かに感じる匂いからすると、おそらくαである事は間違いないだろう。
だとすれば、シグレさんを誘惑するオメガの要素は無いという事になるので、これでまた一安心だ。
僕は密かに胸を撫で下ろした。
さて、それはさておき、今日はシグレさんの原稿が完成したので、お茶をしようということになった。
と言っても、エドナさんも忙しいので短時間にはなるけれど、シグレさんは僕の事も紹介したかったようで、少しでもいいからと、このタイミングで一緒にお茶を飲むことになったのだ。
シグレさんは作家としてそこそこ有名人なので、今日はサングラスに黒っぽい服装でカフェを訪れている。
いつも買い物の時はそれほど気を使っていないけれど、今日は担当さんもいるし、休日な事もあって気をつけているようだ。
(確かに、この二人が一緒に居るとそれだけで目立つかも……)
それはそれで、ちょっと羨ましいけれど。
と、また嫉妬してしまいそうになり、僕はフルフルと頭を振った。
運ばれてきたミルクティーに口をつけていると、エドナさんが僕をまじまじと見つめて口を開いた。
「ねぇ、聞いてもいい?セイラは使用人だと言っていたけど、なんだかそう見えないのよねー。なんていうか、シグレの隣に居て違和感がない……どころか、かなりしっくり来るんだけど?」
「……っ」
まさか、いきなりそこを突かれるとは思っていなかったので、紅茶を吹き出しそうになる。
小さく咽せていると、シグレさんが笑いながら僕の前に紙のフキンを差し出した。
「ははっ、大丈夫?これで拭くといいよ。んー……そうだな」
少し考えてから小さく息を吐くと、シグレさんはやや声のトーンを落とし、慎重な口調で言った。
「実は、俺たち恋人同士なんだ。ああでも、この事は外には漏らさないで欲しい。それに……俺達、まだ番にもなってないし、ね?」
そう言って、僕に微笑みかけるシグレさん。
それを見ていたエドナさんが、呆れたように笑みを溢す。
「まったく、そんな事分かってるわよ。シグレはそこそこ有名人だし、そんな事を公表したら女性ファンが減りそうだわ。ていうか、二人はラブラブなのね。見てて分かるわ」
「ん、そうだよ。ありがとう、エドナ」
やれやれと首を横に振っているエドナに、シグレさんは嬉しそうに微笑み、僕の肩を抱き寄せた。
都内のカフェにて、僕はシグレさんの隣に座り、担当さんこと、エドナ・アロシュに挨拶をする。
「あの、初めまして……僕はシグレさんの家で使用人として働いています、セイラと申します」
そう言ってペコリと頭を下げると、エドナはニッコリと愛想のいい笑みを浮かべて、自分も自己紹介をした。
「初めまして、エドナ・アロシュです。もう三年以上、シグレの担当をさせて貰ってます。よろしくね、セイラ」
「……っはい!」
顔を挙げると、すっと手が差し出されたので、そっと握り返す。
(本当に綺麗な人だな……ていうか、もしかしてエドナさん、α?)
エドナさんの外見は、美しいブロンドの髪に青く澄んだ瞳といった、所謂美人の条件がバッチリ揃っている。
ロングの髪は毛先だけ緩くパーマをかけており、細くくびれた腰元まで伸びていた。
僕はΩな為、αの匂いや雰囲気にはとても敏感だ。
エドナさんから放たれている強いオーラのようなものや、微かに感じる匂いからすると、おそらくαである事は間違いないだろう。
だとすれば、シグレさんを誘惑するオメガの要素は無いという事になるので、これでまた一安心だ。
僕は密かに胸を撫で下ろした。
さて、それはさておき、今日はシグレさんの原稿が完成したので、お茶をしようということになった。
と言っても、エドナさんも忙しいので短時間にはなるけれど、シグレさんは僕の事も紹介したかったようで、少しでもいいからと、このタイミングで一緒にお茶を飲むことになったのだ。
シグレさんは作家としてそこそこ有名人なので、今日はサングラスに黒っぽい服装でカフェを訪れている。
いつも買い物の時はそれほど気を使っていないけれど、今日は担当さんもいるし、休日な事もあって気をつけているようだ。
(確かに、この二人が一緒に居るとそれだけで目立つかも……)
それはそれで、ちょっと羨ましいけれど。
と、また嫉妬してしまいそうになり、僕はフルフルと頭を振った。
運ばれてきたミルクティーに口をつけていると、エドナさんが僕をまじまじと見つめて口を開いた。
「ねぇ、聞いてもいい?セイラは使用人だと言っていたけど、なんだかそう見えないのよねー。なんていうか、シグレの隣に居て違和感がない……どころか、かなりしっくり来るんだけど?」
「……っ」
まさか、いきなりそこを突かれるとは思っていなかったので、紅茶を吹き出しそうになる。
小さく咽せていると、シグレさんが笑いながら僕の前に紙のフキンを差し出した。
「ははっ、大丈夫?これで拭くといいよ。んー……そうだな」
少し考えてから小さく息を吐くと、シグレさんはやや声のトーンを落とし、慎重な口調で言った。
「実は、俺たち恋人同士なんだ。ああでも、この事は外には漏らさないで欲しい。それに……俺達、まだ番にもなってないし、ね?」
そう言って、僕に微笑みかけるシグレさん。
それを見ていたエドナさんが、呆れたように笑みを溢す。
「まったく、そんな事分かってるわよ。シグレはそこそこ有名人だし、そんな事を公表したら女性ファンが減りそうだわ。ていうか、二人はラブラブなのね。見てて分かるわ」
「ん、そうだよ。ありがとう、エドナ」
やれやれと首を横に振っているエドナに、シグレさんは嬉しそうに微笑み、僕の肩を抱き寄せた。
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