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私と幼馴染の最強魔法使い~幼馴染に運命の恋人が現れた!?~
エステルとナタリー
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聖女エステルは、アッシュやナタリーが住んでいる魔法塔とは別棟の来客用の部屋に滞在していた。
敷地は同じの為、エステルが中庭を散歩しているのをナタリーは何度か見かけたことがある。
なるべく関わりたくなかったので、エステルが行きそうな場所へは近付かないようにしていた。
ある日、ナタリーは、闇属性について調べようと、資料室にきていた。そこに、偶然エステルが現れた。
「あ。。。」
お互いに声を出し、気まずい沈黙が流れた。
ナタリーは資料を持ち、
「それでは。」
と言って、その場を離れようとした。
「待って!」
エステルに呼び止められた。
「一度、あなたと話してみたいと思っていたの。この前は、突然ごめんなさい。私のこと、嫌いになったでしょう?」
「いえ、とんでもございません。」
内心苦手ではあったが、ナタリーは当たり障りなく答えた。
「良ければ、今から私が泊まっている部屋に来てくれません?あなたも聞いた方がいい話だと思うの。」
アッシュやナタリーに関することだろう。断る理由がなかった。
ナタリーは承諾し、エステルに連れられ部屋に入室した。
「まず、前世の話をするわ。あなたにも、私達の前世を知って欲しいの。」
前世を知る?そんなことが可能なのか?
ナタリーが戸惑っていると、エステルがナタリーの両手を握った。
「目を閉じて」
ナタリーは言われるがまま、目を閉じた。目を閉じると、そこに広がるのは異国の建物や人々。そして、エステルに瓜二つの姫と呼ばれる女性、美しい従者の男性。
2人の旅路と別れを、ナタリーは垣間見た。
気づいたら、涙を流していた。ひどく悲しい前世の記憶だった。
この2人の生まれ変わりが、エステルとアッシュだというのか。
「アッシュ様も、大河(たいが)だった頃の記憶を取り戻したわ。この前会いにこられた時に、そうおっしゃってた。」
アッシュはやはり、記憶を取り戻し、エステルに会いに来ていた。
「魔力の暴走も、私の聖なる力を吸収し、落ち着かせたわ。しばらく、不安定な状態は避けられるでしょう。」
ナタリーは、頭と心が別になった気分だった。頭では冷静に理解していて、そうなるのが当然の結果だと納得していた。
しかし、心は置いてけぼりになった。力を吸収ということは、『あの行為』をエステルとしたのか。だから、ここ最近はナタリーとしなくても発作は起きなかったのだ。
悲恋を経て、生まれ変わった男女が記憶を取り戻した。
女は予言者で、男は、女がいなければ生きていけない体。
まるで童話の小説のように美しい話じゃないか。
ナタリーが登場人物だとしたら、嫉妬深い役立たずの侍女Aってところが妥当だろう。
ナタリーが、諦めにも似た表情で黙っていると、エステルが申し訳なさそうに言った。
「あなたには悪いと思ってる。大河のことが好きなのでしょう?大河はあなたのこと放っておけないみたい。自分が勝手に連れてきて、専属侍女にしたからって。」
ナタリーは、大河ではなくアッシュだと心の中で呟いていた。
「正式に魔力判定をすれば、闇属性だということが分かると思うわ。闇属性の魔法使いも、大いに活躍している人もいる。使い方次第で毒にも薬にもなる力よ。」
「だけど、あなたは大河の近くにいてはいけない人よ。彼は闇に飲み込まれてしまう。」
ナタリーは無表情でエステルの話を聞いていた。
アッシュが言いにくいことを、すべてエステルが言ってくれたのだ。感謝しないといけない。
「話していただいて感謝します。ご心配には及びません。時期を見て、私は大魔法使い様のお側を離れますので。」
ナタリーはそう言うと、エステルの部屋を後にした。
敷地は同じの為、エステルが中庭を散歩しているのをナタリーは何度か見かけたことがある。
なるべく関わりたくなかったので、エステルが行きそうな場所へは近付かないようにしていた。
ある日、ナタリーは、闇属性について調べようと、資料室にきていた。そこに、偶然エステルが現れた。
「あ。。。」
お互いに声を出し、気まずい沈黙が流れた。
ナタリーは資料を持ち、
「それでは。」
と言って、その場を離れようとした。
「待って!」
エステルに呼び止められた。
「一度、あなたと話してみたいと思っていたの。この前は、突然ごめんなさい。私のこと、嫌いになったでしょう?」
「いえ、とんでもございません。」
内心苦手ではあったが、ナタリーは当たり障りなく答えた。
「良ければ、今から私が泊まっている部屋に来てくれません?あなたも聞いた方がいい話だと思うの。」
アッシュやナタリーに関することだろう。断る理由がなかった。
ナタリーは承諾し、エステルに連れられ部屋に入室した。
「まず、前世の話をするわ。あなたにも、私達の前世を知って欲しいの。」
前世を知る?そんなことが可能なのか?
ナタリーが戸惑っていると、エステルがナタリーの両手を握った。
「目を閉じて」
ナタリーは言われるがまま、目を閉じた。目を閉じると、そこに広がるのは異国の建物や人々。そして、エステルに瓜二つの姫と呼ばれる女性、美しい従者の男性。
2人の旅路と別れを、ナタリーは垣間見た。
気づいたら、涙を流していた。ひどく悲しい前世の記憶だった。
この2人の生まれ変わりが、エステルとアッシュだというのか。
「アッシュ様も、大河(たいが)だった頃の記憶を取り戻したわ。この前会いにこられた時に、そうおっしゃってた。」
アッシュはやはり、記憶を取り戻し、エステルに会いに来ていた。
「魔力の暴走も、私の聖なる力を吸収し、落ち着かせたわ。しばらく、不安定な状態は避けられるでしょう。」
ナタリーは、頭と心が別になった気分だった。頭では冷静に理解していて、そうなるのが当然の結果だと納得していた。
しかし、心は置いてけぼりになった。力を吸収ということは、『あの行為』をエステルとしたのか。だから、ここ最近はナタリーとしなくても発作は起きなかったのだ。
悲恋を経て、生まれ変わった男女が記憶を取り戻した。
女は予言者で、男は、女がいなければ生きていけない体。
まるで童話の小説のように美しい話じゃないか。
ナタリーが登場人物だとしたら、嫉妬深い役立たずの侍女Aってところが妥当だろう。
ナタリーが、諦めにも似た表情で黙っていると、エステルが申し訳なさそうに言った。
「あなたには悪いと思ってる。大河のことが好きなのでしょう?大河はあなたのこと放っておけないみたい。自分が勝手に連れてきて、専属侍女にしたからって。」
ナタリーは、大河ではなくアッシュだと心の中で呟いていた。
「正式に魔力判定をすれば、闇属性だということが分かると思うわ。闇属性の魔法使いも、大いに活躍している人もいる。使い方次第で毒にも薬にもなる力よ。」
「だけど、あなたは大河の近くにいてはいけない人よ。彼は闇に飲み込まれてしまう。」
ナタリーは無表情でエステルの話を聞いていた。
アッシュが言いにくいことを、すべてエステルが言ってくれたのだ。感謝しないといけない。
「話していただいて感謝します。ご心配には及びません。時期を見て、私は大魔法使い様のお側を離れますので。」
ナタリーはそう言うと、エステルの部屋を後にした。
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