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勇者一行の男達

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 それから、イェリはアクレンから受け取った材料を元に、魅了を解毒する薬を煎じた。イェリはエイデルに、アクレンはルイスに薬を飲ませることとなり、イェリはエイデルの元を訪ねていた。

 エイデルの顔色は悪く、辺りをキョロキョロと見回し落ち着きがない様子だった。アクレンの時と同じだ。
 イェリがピンク色の液体を見せると、エイデルは眉を寄せ、暫く薬に手をつけようとはしなかった。
「エイデル様、私のことを信用していただけないことは分かります。しかし、数週間前アクレン様に初めて会った時、今のエイデル様と全く同じ様子でした。四六時中サリーヤ様のことを考え、嫉妬でおかしくなりそうだと、そう仰ってました。私は、エイデル様に日常を取り戻して欲しいのです。」
 エイデルは真剣なイェリの言葉を聞くと、静かに口を開いた。
「君を信用していない訳じゃないんだ。ただ、一つ気掛かりなことがあって。」
「気掛かりなこと?何でしょうか。」
「もし本当に私が魅了されていて、その薬で魅了状態が解けたとしたら········私のこの気持ちは跡形もなく消えてなくなるんだろうか?───こんなに誰かを想うのは初めてだ。サリーヤを愛するこの気持ちを消したくないんだ。」
 イェリはその言葉を聞き、深く考えさせられた。恋とはそもそも魔法のようなものだ。憧れと勘違いと思い込みから始まる。

 イェリのやっていることは、エイデルにとって、もしかしたらルイスにとっても余計なお世話なのかもしれない。例え何かの力が働いていたとしても、それを無理に解くことは、イェリの助けてあげたいという気持ちが先走った自己満足なのかもしれない。
「そうですね··········エイデル様の今の気持ちを消したくないのであれば、この薬は必要ないかもしれません。しかし、魅了魔法をかけた人は········エイデル様の気持ちを弄んだのだと私は思います。エイデル様の反応を見て楽しんでいたか、もしくは意のままに操ろうとしたか。エイデル様の愛が美しかったとしても、相手はその気持ちに応えるどころか、まともに受け取ることすらしてくれません。私はそのことに憤りを感じます。」
「····························」
 エイデルは薬をじっと見つめたまま黙ってしまった。
「薬は置いていきますね。必要なければ捨ててください。飲むのであれば、治療に向けて頑張りましょう。ではまた。」
 そう言い去っていくイェリの後ろ姿を、エイデルは黙って見つめていた。

 翌日、アクレンから手紙で連絡があった。
 ルイスはすぐに解毒薬を飲み、まだ不安定なものの容態は少し落ち着いたとのことであった。
 また驚くことに、エイデルがイェリを直接訪ねてきた。
 エイデルは気まずそうな顔をしていたが、開口一番イェリに謝ってきた。
「すまなかった。」
「え?」
「君を疑ったこと、私が魅了魔法にかかるはずなどないと傲っていたことだ。───あのあと、私は薬を飲んだ。そうしたら············すぐに心境に変化があった。もがいてももがいても抜け出せない底無し沼のようだったのに、今は楽に息ができるんだ。自然を見て美しいと感じるし、君とまた会えて嬉しいと感じる。五感が戻った気分だ。」
 清々しい顔をしたエイデルを見て、イェリは顔を綻ばせた。
「いい効果が出たんですね········本当に良かったです!薬を飲んで······エイデル様が後悔されてるなら、私どうしようかと思いました。」
「後悔どころか、君に感謝しかない。」
 エイデルは照れ臭そうに笑った。
「エイデル様、ですがまだ治療の途中です。慎重にいきましょう。しばらくは、サリーヤ様に会わない方がいいです。三日後、アクレン様のお屋敷で、二回目の薬を飲んでいただきます。ルイスも一緒です。その時経過を見ましょうね。」
「··············アクレンとルイスも一緒なのか?」
「はい!みんな一緒にやりましょう。」
 イェリがにこやかに答えると、エイデルは心なしか落胆したような顔をした。
 本当は個別に治療をしても良かったのだが、イェリにはそうしたくない理由があった。
 ルイスと二人きりは避けたかったし、また、アクレンとルイス二人のいる空間に身の置き所がなかった。
 要するにイェリは気まずかったのだ。

 そうして、二回目の治療の日がやってきた。

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