上 下
21 / 39

不毛な勝負程燃える

しおりを挟む
 翌日から、一緒に昼食を取ろうと俺を待っていたレインのところへソラを連れていった。
「レインー!」
「イアン!────とソラ。」
 俺が手を振るとレインは一瞬ぱぁっと顔が明るくなったが、ソラを見た瞬間真顔に戻った。
「今日からソラも一緒にいいか?」
「······あぁ。もちろん。」
 少しの間があったが、レインはすぐに笑顔で受け入れてくれた。
「良かった!俺、ちょっとランチ買ってくる。待ってて~~!!」
 俺が走って購買へ向かうと、その場はレインとソラ二人きりになった。俺が行方不明事件で騒がせてしまったし、募る話もあるだろう。俺は気を遣ってできるだけゆっくり戻った。
「イアンお帰り。」
 ソラがヒラヒラと手を振りながら俺を待っていた。
「ただいま。何話してたの?」
「んーと、抜けがけも小細工もなしだよって話。」
「はぁ??何だよそれ?2人しか分からないやつじゃん。まぁいいか、食べようぜ!!」
 レインもソラも前みたいに仲良くできそうで良かった。二人がもし恋愛フラグに発展しそうになったら、俺が抜ければいいだけだ。完璧な計画だ!

「そういえば、期末試験の結果どうだった?」
 レインに話を振られ、俺はギクッとした。実は、昨日期末試験の採点が帰ってきたのだが、結果は目も当てられない状況で、追試となったのだった。

 どうせ、レインやソラは成績がいいに決まっている。ゲームのイケメンキャラは頭がいいのは定番の設定だ。
「俺はけっこう悲惨なことに····追試になってしまった。」
「僕はまあまあだったよ!教科は?何が悪かった?」
「えっとぉ·····ほとんど全部。」
 転生先では顔も家柄も良く生まれてくれたが、頭の悪さだけは転生前を引き継いでしまったようだ。レインに答案用紙を見せろと王族特有の有無を言わさぬ命令口調で言われ、俺はしぶしぶテスト結果を晒すはめになった。
「ひ、ひどい。目も当てられないとはこのことだな。授業聞いてないのか?俺の友人として見過ごせないぞ。」
 ひどいのはお前のその言い方だ。オブラートに包むということを知らないのか?
「レイン!そんな言い方しなくてもいいだろ。頭のできが違うんだよ。レインが一度で理解できることが、イアンは三度聞いても覚えられないんだ。」
 フォローをしたつもりなのか、ソラの言い方もまぁまぁ失礼である。
「イアン、俺が教えてやる。追試まで毎日、俺の屋敷で勉強だ。」
「そんな!王子のお手を煩わせるわけには······」
 俺が侍従に戻り断ろうとすると、「逃げるなよ。」と念を押された。
「それなら、僕も手伝うよ。全教科だとレインの負担も大きいし!国語、外国語と地理は得意なんだ。」
「いや、別に俺は全教科でも·····」
 レインがソラの申し出を勝手に断ろうとしたので、俺は慌ててソラにもお願いした。侍従をしていた頃に、レインとあんなことやこんなことをした部屋で二人っきりで勉強、というのは気まずすぎる。

 その日の放課後、さっそくレインの屋敷に訪れた。ここに来るのは数ヶ月ぶりで、なんだか友人としてここに来る日がくるなんて、変な感じがした。

 レインの部屋で、俺を挟んで三人並んで椅子に座った。
「勉強始める前に!せっかくなら、勝負しようよ。」
 ソラが何かを提案し始めた。
「勝負?」
「うんその方がやる気が出るだろ?僕が国語、外国語、地理で、レインが、数学、物理、歴史担当ね。イアンの元の点数から、追試の点数がより上がり幅が大きかった方が勝ち。どう?」
「え、じゃあ俺は?俺の勝ちはないのか?」
 俺が文句を言うと、レインに怒られた。
「お前の成績をあげるためなんだから文句言うな!教えてもらえるだけありがたいと思え。」
「う·······でも、2人は一体何を賭けるの?」
「勝った方が、『イアンを1日貸しきれる権利』をもらえるっていうのは?レインもやる気出るだろ?」
「········ああ。それでいい。時間はきっちり等分で、時間をどの教科に配分するかは自由だ。」
 何がそれでいいのだ。『俺を貸しきれる権利』など、勝ちのご褒美になっていないと思うのだが、二人が納得している以上、俺が口を挟むわけにもいかない。
「了解!じゃあ、今日は僕から始めるね。一時間交代だ。勉強中は集中できるように、二人っきりでやるようにしよう。」
 レインは頷き、黙って部屋を出ていった。

 俺は、毎日二時間みっちり、家庭教師付きで勉強をしなくてはならなくなった。分からないところを少し教えてもらう程度で十分だったのだが、俺が成績が悪いせいでこんなことになろうとは。
 とにかく、せっかく教えてもらえるのだから、できるだけ身になるように頑張ろう!と心に決めたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...