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ヒーロー登場
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そこに立っていたのは意外な人物だった。
「─────おい。お前らイアンに何やってるんだ?」
鬼の形相でゆっくりと近付いてきたそいつは、俺の上にまたがっていた男子生徒の胸ぐらを掴み無理やり立たせた。
「汚い手でイアンに触るな。ゴミにも劣る蛆虫野郎。消え失せろ。」
ドスの聞いた声でそう言うと、男子生徒三人はあっさり俺を解放し、泣きながら倉庫を走り出ていった。
「ソラ········?」
俺を助け出してくれたのは、まさかのヒロインソラだった。
ソラは情けなく倒れている俺に駆け寄り、泣きそうな表情で抱き締めてきた。
「イアン··········!怖かっただろ!?何かされてない!?ごめんよ僕のせいで·········!!!」
先程とは打って変わって、いつもの温和で無害なかわいい男子生徒の表情に戻っていた。
(な、なんだコイツは。二重人格なのか!?こわ········でも、とにかく助かった····)
「ソラ、大丈夫だよ。ありがとう·········。もうダメかと思ったけど、本当に助かったよ。」
俺は心からの感謝の気持ちを伝えた。ソラが来なかったら、俺はあの汚物の餌食になっていたことだろう。
「アイツらはもう二度とイアンに近付けさせないから。安心して。」
ソラの目が一瞬冷たくなり、俺は背筋が凍る思いがした。一体何をするつもりなのだろうか?
「そ、それにしても、よくここが分かったな。あんまり人が来ない場所なのに···」
「あぁ、実はイアンを探してたんだ。話したくて。そしたら物音が聞こえたから───」
「そうだったんだ·····それで話って、何??」
俺が聞くと、イアンは少し躊躇うような表情をした。
「こんな場所もなんだから、屋上に行かない?」
俺たちは屋上に移動し、並んでベンチに腰掛けた。
「僕、イアンにきちんとあの時のこと謝りたくて。」
「あぁ··········別荘でのこと?」
「うん。あんなことになって、本当にごめん!!ずっと後悔してたんだ。····でもあれは、別に計画してやったことじゃない。」
「───え?」
「まず、イアンにその··········いやらしいことしちゃったのは、そういう気分になったからっていうのは分かってくれる?」
「·········うん。男だから、分かるよ。」
「レインに見られたのも想定外で。そしたらレインがすごく怒ってたから、これはチャンスだって考えてしまったんだ。」
「あぁ、レインの周りをウロチョロしてる俺を離れさせるチャンスってこと?」
「ちょっと違う。レインが君を捨てればいいなって思ったんだよ。レインはいつもイアンを独占してて、僕は入り込む余地がなかったから。」
「········??えっと、レインとソラは仲がいいから、俺が邪魔だったんだろ?」
「違うよ!!僕は君と近付きたかったんだ。別荘に行ったとき、レインは僕を牽制してきたからさ、なんかムカついちゃって。君とレインが仲違いすればいいなって思って、レインに勘違いさせたままにしてたんだ。でも、まさか君を馬車から降ろすとは·········こうなったら、君にそのまま僕の屋敷に来てもらおうと思ってあんな行動を取ってしまったんだ。でも、そのまま君が行方不明になってしまって、僕は本当に後悔した。生きた心地がしなかった。」
ソラは俺ではなく、レインに嫉妬してたということか?ヒロインと第一攻略対象が、しょぼい悪役を取り合っていたという構図が理解できなくなっていた。
「───ごめん、頭が混乱してる。要するに、ソラは俺のこと嫌いじゃないってこと?意地悪してたのに?」
「嫌いなんて·····前から仲良くなりたかったけど、僕が君に嫌われてて悲しかったんだ。やっと友達みたいに話せて嬉しかった。そうしたら欲が出て、もっと····君と近い存在になりたかったんだ。」
つまり、俺と親友になりたかったんだな??あいにく、親友の席はブライトが埋めてるから、友達にならなってやらないこともない。なんだ!案外かわいいやつじゃないか。
「なんだよソラ!!友達になりたいならそう言えばいいだろ!?お前が俺を嵌めたこと許せなかったけど、そういうことなら全部水に流すよ。今日も無事だったのはソラのおかげだしな。」
「───友達っていうか····まぁいいや。許してくれるの?」
「うん。でも、今はおれはレインとも友達なんだ。仲良くできるなら友達になろうぜ。」
「ありがとうイアン。これからよろしく。」
レインとソラとも友達になってしまった。ここは本当にBLゲームの世界か?イケメンを友達にするゲームなら、俺はきっとコンプリートしてる。
俺とソラは、友情の証としてお互いの手を固く握りあった。
「─────おい。お前らイアンに何やってるんだ?」
鬼の形相でゆっくりと近付いてきたそいつは、俺の上にまたがっていた男子生徒の胸ぐらを掴み無理やり立たせた。
「汚い手でイアンに触るな。ゴミにも劣る蛆虫野郎。消え失せろ。」
ドスの聞いた声でそう言うと、男子生徒三人はあっさり俺を解放し、泣きながら倉庫を走り出ていった。
「ソラ········?」
俺を助け出してくれたのは、まさかのヒロインソラだった。
ソラは情けなく倒れている俺に駆け寄り、泣きそうな表情で抱き締めてきた。
「イアン··········!怖かっただろ!?何かされてない!?ごめんよ僕のせいで·········!!!」
先程とは打って変わって、いつもの温和で無害なかわいい男子生徒の表情に戻っていた。
(な、なんだコイツは。二重人格なのか!?こわ········でも、とにかく助かった····)
「ソラ、大丈夫だよ。ありがとう·········。もうダメかと思ったけど、本当に助かったよ。」
俺は心からの感謝の気持ちを伝えた。ソラが来なかったら、俺はあの汚物の餌食になっていたことだろう。
「アイツらはもう二度とイアンに近付けさせないから。安心して。」
ソラの目が一瞬冷たくなり、俺は背筋が凍る思いがした。一体何をするつもりなのだろうか?
「そ、それにしても、よくここが分かったな。あんまり人が来ない場所なのに···」
「あぁ、実はイアンを探してたんだ。話したくて。そしたら物音が聞こえたから───」
「そうだったんだ·····それで話って、何??」
俺が聞くと、イアンは少し躊躇うような表情をした。
「こんな場所もなんだから、屋上に行かない?」
俺たちは屋上に移動し、並んでベンチに腰掛けた。
「僕、イアンにきちんとあの時のこと謝りたくて。」
「あぁ··········別荘でのこと?」
「うん。あんなことになって、本当にごめん!!ずっと後悔してたんだ。····でもあれは、別に計画してやったことじゃない。」
「───え?」
「まず、イアンにその··········いやらしいことしちゃったのは、そういう気分になったからっていうのは分かってくれる?」
「·········うん。男だから、分かるよ。」
「レインに見られたのも想定外で。そしたらレインがすごく怒ってたから、これはチャンスだって考えてしまったんだ。」
「あぁ、レインの周りをウロチョロしてる俺を離れさせるチャンスってこと?」
「ちょっと違う。レインが君を捨てればいいなって思ったんだよ。レインはいつもイアンを独占してて、僕は入り込む余地がなかったから。」
「········??えっと、レインとソラは仲がいいから、俺が邪魔だったんだろ?」
「違うよ!!僕は君と近付きたかったんだ。別荘に行ったとき、レインは僕を牽制してきたからさ、なんかムカついちゃって。君とレインが仲違いすればいいなって思って、レインに勘違いさせたままにしてたんだ。でも、まさか君を馬車から降ろすとは·········こうなったら、君にそのまま僕の屋敷に来てもらおうと思ってあんな行動を取ってしまったんだ。でも、そのまま君が行方不明になってしまって、僕は本当に後悔した。生きた心地がしなかった。」
ソラは俺ではなく、レインに嫉妬してたということか?ヒロインと第一攻略対象が、しょぼい悪役を取り合っていたという構図が理解できなくなっていた。
「───ごめん、頭が混乱してる。要するに、ソラは俺のこと嫌いじゃないってこと?意地悪してたのに?」
「嫌いなんて·····前から仲良くなりたかったけど、僕が君に嫌われてて悲しかったんだ。やっと友達みたいに話せて嬉しかった。そうしたら欲が出て、もっと····君と近い存在になりたかったんだ。」
つまり、俺と親友になりたかったんだな??あいにく、親友の席はブライトが埋めてるから、友達にならなってやらないこともない。なんだ!案外かわいいやつじゃないか。
「なんだよソラ!!友達になりたいならそう言えばいいだろ!?お前が俺を嵌めたこと許せなかったけど、そういうことなら全部水に流すよ。今日も無事だったのはソラのおかげだしな。」
「───友達っていうか····まぁいいや。許してくれるの?」
「うん。でも、今はおれはレインとも友達なんだ。仲良くできるなら友達になろうぜ。」
「ありがとうイアン。これからよろしく。」
レインとソラとも友達になってしまった。ここは本当にBLゲームの世界か?イケメンを友達にするゲームなら、俺はきっとコンプリートしてる。
俺とソラは、友情の証としてお互いの手を固く握りあった。
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