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下手な嘘はすぐばれる
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『親愛なる レイン殿下
御無沙汰しております。あなた様の元侍従、イアンです。
先日の件につきましては、誤解を招くような行動を取ってしまい大変申し訳ございませんでした。お怒りはごもっともですが、どうかこの私に情け容赦くださいますようお願い申し上げます。
殿下とソラ様が、私を探されていると風の噂で聞きました。安否確認であれば大変申し訳ないと思い、このような形でご連絡差し上げました。処罰をご検討とのことでしたら、再度申し上げますが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
私は、今後一切、殿下やソラ様の目の前に現れることはないとお約束いたします。ですから、これ以上の捜索はご遠慮ください。
今まで大変お世話になりました。
イアン』
「できたぞ!ブライト、添削してくれ!」
「············なんか、所々ムカつく手紙だな。まぁ、いいんじゃないか?王宮に届けてくる。」
俺はブライトに礼をいい、どうかよろしく頼むと送り出した。
(これでよし!手紙を読めば、捜索もなくなるだろう。)
そう思ってブライトを待っていたが、ブライトは夜になっても部屋に帰ってこなかった。
「どうしてまだ帰ってこないんだ·····!?もしかして·····俺の仲間だと思われて、拷問されてるとか───!?」
あり得ない話だが、ここはゲームの世界。何が起こっても不思議じゃない。
ワタワタしていると、ブライトが疲れた顔で帰ってきた。
「ブライト!!遅いじゃんか!心配したんだぞ······!もしかして、何かされたのか!?」
「はぁ、手紙だけ侍従に渡して帰ろうと思ったんだがな。第一王子にたまたま出くわし、お前の居場所を吐けと軟禁されてた。俺が吐かないもんだから、じゃあお前に手紙を渡せって言うから、預かってきたんだ。」
「えっ手紙を····?」
レインからの手紙なんて、見るのが怖すぎる。あんなに怒ってたんだ、きっと罵詈雑言が書いてあるに違いない。
恐る恐る手紙を開け、俺は片目で読んだ。
『イアンへ
先日は我を忘れ、何も聞かずにお前に怒りをぶつけてしまいすまなかった。ソラからふざけていただけだと話は聞いた。処罰するつもりはない。すぐに戻ってくるように。
レイン』
読み終わった俺は、手紙を持ったままプルプル震えた。
「これは罠だ!!!俺を油断させて、地獄に叩き落とすつもりなんだ!」
「はぁ·····そう思うなら、無視するのが一番だな。」
ブライトはそう言うと、手紙をビリビリと破り、ゴミ箱に捨てた。
「あそこまで書いたなら、捜索は止むだろ。疲れた。もう寝ようぜ。」
「───ごめんな、俺のせいで、巻き込んじゃって·····」
俺が申し訳なさそうにすると、ブライトはオレの頭をポンポンと叩き、「いいって。気にすんなよ。」と言ってくれた。
ベッドに横になり部屋の電気を消した。俺はぐるぐると色んなことを考えてしまい、すぐに眠れそうになかった。
「········イアン、起きてるか?」
暗闇の中、ブライトがボソリと話し掛けてきた。
「──うん。起きてる。」
「あのさ──この前言ってた、初体験の話。お嬢様と浴室でヤッたっていう······」
「!?!?え、うん、それがどうした·····?」
俺がブライトに張り合う為に一部脚色した作り話を蒸し返され、俺は焦ってしまった。
「あれってもしかして───第一王子の話??」
「なななんでだよ!そんなワケないだろ!?なんで男と······!!」
「いやだって、アイツのお前に対する執着が、ただの侍従に対するものじゃなかったからさ。ここまでしないだろ普通。」
ブライトに見破られた俺は、とぼければ良かったものをすべてを白状してしまった。嘘がつけないのは頭が悪い奴の特徴だ。
「お、俺嘘ついたんだ!お前からどうせ経験ないだろって言われて悔しくて。お嬢様じゃなくて男の主人との経験しかないんだ。でも、本当はヤッてない!ちょっと何て言うか·····浴室でいかがわしいことはされたことあるけど、最後まではヤッてない!」
これは言い訳になっているのだろうか。『お嬢様とヤッたのは嘘』とだけ言えば良かったのではないか。俺はどんどん惨めな暴露をしている気がしてきた。
「·········いかがわしいことって、あいつに何されたんだ?」
「えと····背中を流そうと思って浴室に入ったら、服を脱げ洗ってやるって──それで、王子の手で······」
はあ?と憤るようなブライトの声で言葉を遮られた。
「もういい分かった!じゃあソラは?プールで遊んで誤解されるって、何してたんだよ?」
「途中まで普通に遊んでたんだよ!裸で泳いだりしてさ。それで、ソラが俺の下の毛が何色か気になるからよく見たいっていうから····見せたら····触られて·····やめてほしくて押し倒し返した所を、レイン王子に見られた。」
そこまで聞くと、ブライトはガバッと起き上がり、俺が寝ている二段ベッドの上段に勢いよく上がってきた。
「お前何してんだよ·····!?隙だらけだからそういうことされるんだろ!?」
よく分からないが、ブライトは大層怒っているようだ。
「な、何で怒るんだよ?俺が悪いのかよ!?」
「そうだよ!お前が男を誘うから悪いんだろ!?」
俺はなんだか悲しくなってきた。必死に破滅エンドを回避するために生きてきたつもりなのに、なぜこうなってしまうのだろうか。
「なんでこんなことでお前と言い争わなきゃいけないんだ······?俺のこと、男とそんなことして不潔だと思ってるんだろ?」
俺の声が震えていることに気づいたブライトは、言い過ぎてしまい気まずそうに顔を背けた。
「······今お前と話したくない。おやすみ。」
俺はそう言うと、毛布を被って寝たふりをした。
毛布の中でくるまっていた俺の耳に、「··········イアン、ごめん。おやすみ」と言うブライトの弱々しい声が聞こえた。
御無沙汰しております。あなた様の元侍従、イアンです。
先日の件につきましては、誤解を招くような行動を取ってしまい大変申し訳ございませんでした。お怒りはごもっともですが、どうかこの私に情け容赦くださいますようお願い申し上げます。
殿下とソラ様が、私を探されていると風の噂で聞きました。安否確認であれば大変申し訳ないと思い、このような形でご連絡差し上げました。処罰をご検討とのことでしたら、再度申し上げますが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
私は、今後一切、殿下やソラ様の目の前に現れることはないとお約束いたします。ですから、これ以上の捜索はご遠慮ください。
今まで大変お世話になりました。
イアン』
「できたぞ!ブライト、添削してくれ!」
「············なんか、所々ムカつく手紙だな。まぁ、いいんじゃないか?王宮に届けてくる。」
俺はブライトに礼をいい、どうかよろしく頼むと送り出した。
(これでよし!手紙を読めば、捜索もなくなるだろう。)
そう思ってブライトを待っていたが、ブライトは夜になっても部屋に帰ってこなかった。
「どうしてまだ帰ってこないんだ·····!?もしかして·····俺の仲間だと思われて、拷問されてるとか───!?」
あり得ない話だが、ここはゲームの世界。何が起こっても不思議じゃない。
ワタワタしていると、ブライトが疲れた顔で帰ってきた。
「ブライト!!遅いじゃんか!心配したんだぞ······!もしかして、何かされたのか!?」
「はぁ、手紙だけ侍従に渡して帰ろうと思ったんだがな。第一王子にたまたま出くわし、お前の居場所を吐けと軟禁されてた。俺が吐かないもんだから、じゃあお前に手紙を渡せって言うから、預かってきたんだ。」
「えっ手紙を····?」
レインからの手紙なんて、見るのが怖すぎる。あんなに怒ってたんだ、きっと罵詈雑言が書いてあるに違いない。
恐る恐る手紙を開け、俺は片目で読んだ。
『イアンへ
先日は我を忘れ、何も聞かずにお前に怒りをぶつけてしまいすまなかった。ソラからふざけていただけだと話は聞いた。処罰するつもりはない。すぐに戻ってくるように。
レイン』
読み終わった俺は、手紙を持ったままプルプル震えた。
「これは罠だ!!!俺を油断させて、地獄に叩き落とすつもりなんだ!」
「はぁ·····そう思うなら、無視するのが一番だな。」
ブライトはそう言うと、手紙をビリビリと破り、ゴミ箱に捨てた。
「あそこまで書いたなら、捜索は止むだろ。疲れた。もう寝ようぜ。」
「───ごめんな、俺のせいで、巻き込んじゃって·····」
俺が申し訳なさそうにすると、ブライトはオレの頭をポンポンと叩き、「いいって。気にすんなよ。」と言ってくれた。
ベッドに横になり部屋の電気を消した。俺はぐるぐると色んなことを考えてしまい、すぐに眠れそうになかった。
「········イアン、起きてるか?」
暗闇の中、ブライトがボソリと話し掛けてきた。
「──うん。起きてる。」
「あのさ──この前言ってた、初体験の話。お嬢様と浴室でヤッたっていう······」
「!?!?え、うん、それがどうした·····?」
俺がブライトに張り合う為に一部脚色した作り話を蒸し返され、俺は焦ってしまった。
「あれってもしかして───第一王子の話??」
「なななんでだよ!そんなワケないだろ!?なんで男と······!!」
「いやだって、アイツのお前に対する執着が、ただの侍従に対するものじゃなかったからさ。ここまでしないだろ普通。」
ブライトに見破られた俺は、とぼければ良かったものをすべてを白状してしまった。嘘がつけないのは頭が悪い奴の特徴だ。
「お、俺嘘ついたんだ!お前からどうせ経験ないだろって言われて悔しくて。お嬢様じゃなくて男の主人との経験しかないんだ。でも、本当はヤッてない!ちょっと何て言うか·····浴室でいかがわしいことはされたことあるけど、最後まではヤッてない!」
これは言い訳になっているのだろうか。『お嬢様とヤッたのは嘘』とだけ言えば良かったのではないか。俺はどんどん惨めな暴露をしている気がしてきた。
「·········いかがわしいことって、あいつに何されたんだ?」
「えと····背中を流そうと思って浴室に入ったら、服を脱げ洗ってやるって──それで、王子の手で······」
はあ?と憤るようなブライトの声で言葉を遮られた。
「もういい分かった!じゃあソラは?プールで遊んで誤解されるって、何してたんだよ?」
「途中まで普通に遊んでたんだよ!裸で泳いだりしてさ。それで、ソラが俺の下の毛が何色か気になるからよく見たいっていうから····見せたら····触られて·····やめてほしくて押し倒し返した所を、レイン王子に見られた。」
そこまで聞くと、ブライトはガバッと起き上がり、俺が寝ている二段ベッドの上段に勢いよく上がってきた。
「お前何してんだよ·····!?隙だらけだからそういうことされるんだろ!?」
よく分からないが、ブライトは大層怒っているようだ。
「な、何で怒るんだよ?俺が悪いのかよ!?」
「そうだよ!お前が男を誘うから悪いんだろ!?」
俺はなんだか悲しくなってきた。必死に破滅エンドを回避するために生きてきたつもりなのに、なぜこうなってしまうのだろうか。
「なんでこんなことでお前と言い争わなきゃいけないんだ······?俺のこと、男とそんなことして不潔だと思ってるんだろ?」
俺の声が震えていることに気づいたブライトは、言い過ぎてしまい気まずそうに顔を背けた。
「······今お前と話したくない。おやすみ。」
俺はそう言うと、毛布を被って寝たふりをした。
毛布の中でくるまっていた俺の耳に、「··········イアン、ごめん。おやすみ」と言うブライトの弱々しい声が聞こえた。
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