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山道は侮れない

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 俺は何時間も山道をさ迷い歩いた。俺の思い込みでありたいが、ふと気づいたことがある。
 (こんなに町に着かないものか?ただ道なりに歩けば、町に戻れるはずなのに。)
 おまけに、ゴロゴロと雷がなり、雲行きが怪しくなってきた。雨がポツポツと降ってきたではないか。
 (最悪だ!雨宿りしようにも、山の中だから建物もない····!俺、絶対に道に迷ってる!!)
 それから、雨は本降りになり、俺はさらに何時間も山の中をさ迷い歩いた。雨で体が冷え、ガチガチと歯が鳴った。
 (俺、このままだと町に着く前に凍死するんじゃないか····?)

 そう本気で途方に暮れていると、近くで馬車が走ってくる音がした。
 (助かった!レインが引き返してきてくれたんだ──!!)
 俺は、見つけてもらおうと、馬車の音がする方へ走り出た。
 突然木の影から飛び出してきた俺に馬が驚き、馬車は荒れ狂いながら止まった。

「な、何なんだ!?どうした!?」
 馬車の中から出てきたのは、俺の見覚えがある男だった。

 第二王子、クライン········

 昨夜一睡もできず、大雨の中何時間も歩き続けた疲労で、俺はその場で意識を失った。

 ◇

 レインはひどく腹が立っていた。
 昨夜、一人部屋で寂しがっているかと思い、寝ているはずのイアンを訪れると、部屋にイアンはいなかった。

 一応部屋に見に行くと、ソラもいない。
 行くとしたら、屋敷の中にあるプールしかない。貧乏人達が物珍しがって、プールに遊びに行ったんだろうと思った。

 そして、プールサイドで見た光景に驚愕した。
 イアンがソラを襲っていた。カッと頭に血が登り、思い切りイアンを蹴り飛ばした。

 部屋に戻ってからも怒りが治まらず、明日あいつをどうしてやろうかと、そればかり考えていた。

 改心したふりをして、俺を騙していたのも許せないし、俺とあんなことをしておきながら、ソラを襲ったというのもさらに許せなかった。あいつは節操なしの畜生野郎だ。

 屋敷に帰り今度こそ突き放してやろうと思っていたが、途中でどうしてもあいつご許せなくなり、馬車から引きずり降ろした。

 どうせ行く当てもないのだ。泣いて俺に許しを乞えばいい。魔が差しただけなら、許してやらないこともない。

 一時間ほど道なりに歩けば町に着く。屋敷まで自力で歩けない距離でもないし、反省してそれくらい自力で戻ってこい、そう思っていた。

 ソラとは、帰ってくるなり早々に別れた。ソラが少し急いでいるように見えたが気のせいだろうか?

 しかし、何時間待ってもイアンは屋敷に戻ってこなかった。おまけに雨が本降りになってきたので、レインは心配になってきた。
 (アイツ、一体何やってるんだ??まさか、どこかに行けというのを真に受けたのか?それか山の中で道に迷ってるのか·····?)
 レインは急いで馬車を出し、別荘への道を引き返した。それから何時間も探したが、イアンは見つからなかった。

 大雨になり、山の中をこれ以上捜索するのは危険だと侍従から止められ、しぶしぶ一度屋敷に帰ってきた。

 それから翌日、翌々日も、山の中、近隣の民家、市場などを屋敷の者総出で探したが、結局イアンは見つけられなかった。あんなことがあったソラも、イアン探しに協力してくれたが、一向に奴は見つからなかった。責任を感じているのか、ソラはひどく落胆しているように見えた。

 レインは日々不安と焦りばかりが募っていった。
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