上 下
8 / 38

腹黒ヒロイン

しおりを挟む
「ソ、ソラ!?───もービックリしたよ!泥棒かお化けだったらどうしようかと思った!」
 安心した俺は、ソラが立っているプールサイドまで泳いできた。
「僕だって驚いたよ!プールの方から音がするから、泥棒かなって·····そしたらイアンが楽しそうに泳いでた。プール好きなの?僕も入ろうかな。」
 それはいい考えだ。一人で泳ぐより、友達と泳ぐ方が楽しいに決まっている。
「いいね!泳ごう!僕は服全部脱いじゃった。ソラも、僕しかいないから気にせず脱いじゃえよ!」
「え?·····うん。恥ずかしいから、あっち向いてて。」
 何を男同士で恥ずかしがっているんだと思いながら、俺は気にせず泳ぎを再開した。
 ザブンとソラもプールに入った為、遊びのつもりでソラに思いっきり水をかけた。
「······冷たっ!よくもやったな!」
 ソラも笑いながら、俺に水をかけ返してきた。
 それからプールの中で年甲斐もなく鬼ごっこをして遊んだ。少し疲れたから休憩しようということになり、プールサイドで2人でゴロンと横になった。

 部屋にある大きな窓から、月が見えた。月明かりが差し込んでいる。
「わぁー月がすごくきれいだね。」
 俺がそう言うと、ソラは「うん、ほんとにきれい。」と小さな声で言った。じっと見られている気がしたので、ソラの方を向くと、あわてて目を逸らされた。
「え?なんだよその反応?」
 からかってやろうと思い、ソラの顔を覗き込んだ。
「いや、ほんとやめて。」
 ソラが照れながら手で顔を隠した。

 ソラの視線が、俺の下腹部に移った。これは多分、男子特有の『アレの大きさ比べ』だ。風呂に入ったときに、こっそり自分と友達のアレの大きさを比べ、自分の中で勝ったか負けたかを決めるのだ。
「·········どっちの勝ち??」
 俺は笑いながらソラに聞いてみた。
「·····ち、違うよ!大きさを見てたんじゃなくて───!」
「じゃあ何を見てたんだよ?」
「いや、イアンはきれいな金髪だから、その····下の方も同じ色なのかなって·····」
 そうか、ソラは茶髪だから、金髪の奴の下の毛を見たことがなかったのか。
「珍しい?よく見てみる?」
 冗談半分、からかい半分で言ったつもりだったが、ソラが真面目な顔をして、「いいの?」と言ってきた。
「えっ·······あぁ、いいよ。」
 まじまじと見られると恥ずかしいのだが、言った手前断れなかった。

 ソラが俺の下腹部に顔を近づけた。すると、手で俺の下の毛に振れたので驚いてしまった。
「な、なんで触るんだよ!?」
「イアンは下もキレイなんだなって思って·····それに、ここも。すごく───」
 ソラは、恍惚とした表情を浮かべて、俺の大事な部分をおもむろに握ってきた。
「·······っ!!ソラ!何して·········」
「イアン、君が恥ずかしがっているところ見たいんだ。」
 そう言うと、ソラはゆっくりと俺を後ろに押し倒し、そっと唇を重ねてきた。
 握っていた手を動かし始めたので、俺は呻き声を洩らした。
「ソラ······なんで······?」
 プールで冷えた体に、ソラの唇と手の温もりが余計に気持ちいい。快感の波が襲ってきそうで、俺はさすがにマズいと思った。
「········やめろって!!」
 俺は思いっきりソラの手首を掴み、押し倒し返した。俺がソラに馬乗りになったその時、プールの扉がギィッと開いた。

 レインだった。

「お前ら·····そこで何してる!?」

 素っ裸の2人、ソラにまたがっている俺、ソラの手首に残る俺の掴んだ手の痕、すべてが俺に分が悪い。

 まさか、この遠出は『ソラが、元悪役侍従、兼当て馬に襲われるイベント』だったのだろうか。すごい形相で大股にこちらに近付いてくるレインを見ながら、俺はどうこのピンチを乗り越えようかと考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

処理中です...