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悲しき当て馬
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今日は、俺も楽しみにしていたレインとの遠出の日だ。
行き先は、王家が所有している僻地の別荘ということだった。所有していた王家の重鎮が亡くなった為、ここ数年は空き別荘になっていたところをレインが譲り受けたらしい。
「イアン、行こうか。今日はソラも一緒に行くことになった。いいか、おかしなことは考えるなよ。」
「はい!もちろんです。」
元々ソラは行く予定がなかったが、学園で週末の予定を聞かれたレインが、遠出のことをポロッとソラに言ってしまったらしい。
ソラが「ぜひ一緒に行きたい!!」と押し切ったらしく、同行することになった。
(なんでよりにもよってソラと·····それなら二人で行ってくれ!俺レインから見張られるじゃん!)
気乗りしなかったが、そもそもソラに意地悪をする気は毛頭なかったので、こうなったらソラとも仲良くして、遠出を楽しもうと思っていた。
馬車で2時間程揺られ、森の中を抜けたところに別荘はあった。近くに湖があり、たくさんの鳥が生息している、美しい場所だった。
屋敷も手入れが行き届いており、なんと、室内プールがあった。
プールを初めて見たイアンは、テンションが上がってしまい、
(夜中、こっそり泳ぎに来よう!!)
と心に決めたのだった。
日中は湖でボートに乗ったり、乗馬や釣りをして楽しんだ。できるだけ、レインとソラが二人きりになるように動いたつもりだったが、事あるごとに、
「おい、イアンどこに行く、こっちにこい」
「イアン!そっちじゃないよ。一緒に行こう!」
と行く手を阻まれ、一人きりになれなかった。むしろ、
「ソラは休憩してるから、俺と二人でボートに乗ろう」だの
「僕、乗馬下手だから、イアン一緒に乗ろう!レインは一人で乗ってるからさ。」
だのと、レインとソラが、俺と二人きりになろうとしたがっているような雰囲気が感じられた。
(これはなんなんだ?もしや、俺は『当て馬』にされているのか?)
転生前に漫画で読んだことがある。本命の相手を振り向かせるために、利用されるのが悲しき『当て馬』だ。
(きっとそうだ。俺は、BLゲームにおける、『元悪役侍従、兼当て馬』に設定されたんだ。この役目を全うしないと、また破滅ルートに戻される·····!!)
そう思った俺は、レインとソラの要望にすべて笑顔で応える、八方美人野郎になっていた。そうしていると、レインとソラの間に、険悪なムードが漂い始めた。
「ソラ、お前は体力がないんだから、少し部屋で休んできたらどうだ。」
「大丈夫だよ。レインこそ、いつも忙しいんだから、今日くらいゆっくりしたいんじゃない?休んでおいでよ。」
二人とも、俺に休めとは言ってくれないのか·····俺は部屋でゆっくり休みたかったのだが、立場上自分から申し出ることはできなかった。
そんなこんなで、三人で専属シェフが作った夕食を食べた。
今日はお開きにしようということになり、それぞれの部屋へ帰っていった。
(よし!やっと一人で行動できる!俺の目的は····そう、プールだ!!)
レインやソラは特に珍しくないのか、室内プールに興味を示さなかった。
2人が寝静まったであろう夜中に、俺はこそこそと部屋を抜け出し、廊下の一番奥にある室内プールへ向かった。
「わぁ~!!最高だ!!夢の貸し切りプール!!」
シーンと静まり帰った誰もいない真夜中のプールを見ると、余計にワクワクし興奮を押さえきれなかった。
俺は着ていた服をすべて脱ぎ捨て、広いプールに思いっきりダイブした。クロールをしたり、平泳ぎをしたり、浮いたりして好きに泳いでいると、ガチャンとドアを開閉する音が聞こえた。
(え!?誰か入ってきた·····!?)
この真夜中に、レインかソラのどちらかでなければ、泥棒かお化けだ。
俺は一気に心臓が縮んだ。
「·········イアン?」
恐る恐る顔を出したのは、ソラだった。
行き先は、王家が所有している僻地の別荘ということだった。所有していた王家の重鎮が亡くなった為、ここ数年は空き別荘になっていたところをレインが譲り受けたらしい。
「イアン、行こうか。今日はソラも一緒に行くことになった。いいか、おかしなことは考えるなよ。」
「はい!もちろんです。」
元々ソラは行く予定がなかったが、学園で週末の予定を聞かれたレインが、遠出のことをポロッとソラに言ってしまったらしい。
ソラが「ぜひ一緒に行きたい!!」と押し切ったらしく、同行することになった。
(なんでよりにもよってソラと·····それなら二人で行ってくれ!俺レインから見張られるじゃん!)
気乗りしなかったが、そもそもソラに意地悪をする気は毛頭なかったので、こうなったらソラとも仲良くして、遠出を楽しもうと思っていた。
馬車で2時間程揺られ、森の中を抜けたところに別荘はあった。近くに湖があり、たくさんの鳥が生息している、美しい場所だった。
屋敷も手入れが行き届いており、なんと、室内プールがあった。
プールを初めて見たイアンは、テンションが上がってしまい、
(夜中、こっそり泳ぎに来よう!!)
と心に決めたのだった。
日中は湖でボートに乗ったり、乗馬や釣りをして楽しんだ。できるだけ、レインとソラが二人きりになるように動いたつもりだったが、事あるごとに、
「おい、イアンどこに行く、こっちにこい」
「イアン!そっちじゃないよ。一緒に行こう!」
と行く手を阻まれ、一人きりになれなかった。むしろ、
「ソラは休憩してるから、俺と二人でボートに乗ろう」だの
「僕、乗馬下手だから、イアン一緒に乗ろう!レインは一人で乗ってるからさ。」
だのと、レインとソラが、俺と二人きりになろうとしたがっているような雰囲気が感じられた。
(これはなんなんだ?もしや、俺は『当て馬』にされているのか?)
転生前に漫画で読んだことがある。本命の相手を振り向かせるために、利用されるのが悲しき『当て馬』だ。
(きっとそうだ。俺は、BLゲームにおける、『元悪役侍従、兼当て馬』に設定されたんだ。この役目を全うしないと、また破滅ルートに戻される·····!!)
そう思った俺は、レインとソラの要望にすべて笑顔で応える、八方美人野郎になっていた。そうしていると、レインとソラの間に、険悪なムードが漂い始めた。
「ソラ、お前は体力がないんだから、少し部屋で休んできたらどうだ。」
「大丈夫だよ。レインこそ、いつも忙しいんだから、今日くらいゆっくりしたいんじゃない?休んでおいでよ。」
二人とも、俺に休めとは言ってくれないのか·····俺は部屋でゆっくり休みたかったのだが、立場上自分から申し出ることはできなかった。
そんなこんなで、三人で専属シェフが作った夕食を食べた。
今日はお開きにしようということになり、それぞれの部屋へ帰っていった。
(よし!やっと一人で行動できる!俺の目的は····そう、プールだ!!)
レインやソラは特に珍しくないのか、室内プールに興味を示さなかった。
2人が寝静まったであろう夜中に、俺はこそこそと部屋を抜け出し、廊下の一番奥にある室内プールへ向かった。
「わぁ~!!最高だ!!夢の貸し切りプール!!」
シーンと静まり帰った誰もいない真夜中のプールを見ると、余計にワクワクし興奮を押さえきれなかった。
俺は着ていた服をすべて脱ぎ捨て、広いプールに思いっきりダイブした。クロールをしたり、平泳ぎをしたり、浮いたりして好きに泳いでいると、ガチャンとドアを開閉する音が聞こえた。
(え!?誰か入ってきた·····!?)
この真夜中に、レインかソラのどちらかでなければ、泥棒かお化けだ。
俺は一気に心臓が縮んだ。
「·········イアン?」
恐る恐る顔を出したのは、ソラだった。
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