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目覚めたら悪役
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「ねー!このゲームやってみて!はまるよ!」
俺のモテない喪女姉が、突然部屋にやってきてBLゲームを手渡してきた。
「げっなんだよこれ!BLじゃん。男がするわけないだろ。こんなのばっかやってるからお前モテないんだよ。」
俺がそういうと、姉はグーパンチで俺の頭を殴った。
「いってぇ!何すんだよ!」
「一言多いんだよあんたは!!BLだけどストーリーが面白いの!いいから騙されたと思ってやってみな。」
そう言い残し、姉は部屋から出ていった。
やらなかったら姉からまた文句を言われるだろうと思い、最初だけでも試しにやってみるかとプレイし始めた。すると、姉のいう通り、思いの外面白く、夢中で夜中までプレイしてしまった。ヒロインはソラという美少年で、攻略キャラは、第一王子のレイン、第二王子のクライン、親友のブライトだった。
俺は、学園の小物悪役キャラ イアンが、ヒロインのソラを陥れようとし、悪事を断罪され、第一王子レインから手首を切り落とされる、というところまでプレイし、寝ることにした。
◇
朝目覚めた俺は、見知らぬ天井が目に飛び込んできて、しばらく頭が働かなかった。
(ん?ここはどこだ?夢でも見ているのか?)
俺の部屋とは全く違う部屋だった。豪華な天蓋付きベッドはフワフワで、部屋の中は中世ヨーロッパの貴族ような趣のある部屋だった。
そして、しばらくすると、俺は記憶が蘇ってきた。俺の名前はイアン、15歳。今年から、貴族ばかりが通う学園に入学することになっている。
(これは、よく聞く異世界転生ってやつか?まさか、寝る前にプレイしたBL小説とは・・・それにしても、よりにもよって、イアンって!)
俺は頭を抱えたくなった。イアンの姿を鏡でじっくり見てみた。
金髪の巻き毛と、同じく金色の瞳。見た目が美しいことを鼻にかける、すごく意地悪なキャラクターがイアンだ。嫉妬深く、平民出身のヒロイン、ソラを目の敵にしている。第一王子、レインに近づこうと画策するが、全く相手にされないしょうもないキャラだ。転生前の俺の容姿と比べると、容姿ガチャ当たりすぎて、しばらく自分の美しさに見とれてしまった。
そんなことより、今日は学園の入学式である。
転生したと分かったからには、手首を切り落とされる破滅ルートは回避しなければならない!!と意気込んで登園したのだが····
重大な選択を迫られる場面では、ことごとく自分の意思とは反した行動を取ってしまうのだ。まるで、システムに反した行動は取れないように、物語通りに進んでいた。
数ヵ月後、いよいよ、イアンは第一王子、レインに断罪される時がきた。その後、人目の付かない森の中に連れてこられ、乱暴に地面に転がされた。
「お前の数々の悪事、見逃すことはできない。命だけは助けてやる。しかし、もう二度と悪さができないように、お前の両手首をもらうぞ。」
イアンは、この場面を知っている。レインに手首を切り落とされた後、家からも勘当されたイアンは、道端でひっそりと息絶えるのだ。
このストーリーも変えることはできないと分かっていたが、イアンはこの世界に転生してしまった運命を呪い、涙を流しながら懇願した。
「レイン王子····!どうか、お助けください。自分ではどうしようもなかったんです!!ソラに悪事を働きたくはないのに、体が言うことをきかず──何でもしますから、どうか手を切り落とさないでください!!」
いつもなら、ストーリーと違うセリフは言えないはずなのだが、今日は何故だか自分が思った通りの言葉が出た。
だか、そんなことは今さら全く関係はない。イアンは、手首を切り落とされる時の痛みが想像できず、恐れおののいた。
「·····悪事を働きたくなかっただと!?それではなぜ、あのようなことを───!!本当に、後悔しているのか!?」
「───はい!心から後悔しています。神に誓って、2度と同じ過ちを繰り返しません!!!」
·········ん???レインはこのようなセリフは言わないはずだ。システムのバグなのか!?
イアンは、最後の祈りを込めて、涙を流しながらレインの足にしがみついた。
「レイン様······!!お助けを~!何でもいたします!」
レインは情けをかけてくれているのか、戸惑った表情をし、構えていた剣を鞘にしまった。
「·······クソッ!!2度はないと思え!」
「!?助けてくださるのですか!?!?レイン様ありがとうございます!!」
イアンは泣いて喜んだ。どういうわけか分からないが、初めてストーリーから外れたことが起こっている。
「········ただし、俺にはお前を見張る責任がある。」
「───はい。」
「しばらくは、俺の屋敷で働け。お前は勘当されたからな。もう貴族令息ではなく、ただの侍従だ。特別扱いはしないからな。覚悟しとけよ。」
「───はい!!レイン様!!誠心誠意、仕えさせていただきます!!!」
嘘みたいだが、破滅ルートを回避できた。手首さえ切り落とされないのであれば、勘当されようが、レインの侍従であろうが、全てがマシである。
この日から、イアンの破滅ルートから外れた、新たなルートが幕を明けた。
俺のモテない喪女姉が、突然部屋にやってきてBLゲームを手渡してきた。
「げっなんだよこれ!BLじゃん。男がするわけないだろ。こんなのばっかやってるからお前モテないんだよ。」
俺がそういうと、姉はグーパンチで俺の頭を殴った。
「いってぇ!何すんだよ!」
「一言多いんだよあんたは!!BLだけどストーリーが面白いの!いいから騙されたと思ってやってみな。」
そう言い残し、姉は部屋から出ていった。
やらなかったら姉からまた文句を言われるだろうと思い、最初だけでも試しにやってみるかとプレイし始めた。すると、姉のいう通り、思いの外面白く、夢中で夜中までプレイしてしまった。ヒロインはソラという美少年で、攻略キャラは、第一王子のレイン、第二王子のクライン、親友のブライトだった。
俺は、学園の小物悪役キャラ イアンが、ヒロインのソラを陥れようとし、悪事を断罪され、第一王子レインから手首を切り落とされる、というところまでプレイし、寝ることにした。
◇
朝目覚めた俺は、見知らぬ天井が目に飛び込んできて、しばらく頭が働かなかった。
(ん?ここはどこだ?夢でも見ているのか?)
俺の部屋とは全く違う部屋だった。豪華な天蓋付きベッドはフワフワで、部屋の中は中世ヨーロッパの貴族ような趣のある部屋だった。
そして、しばらくすると、俺は記憶が蘇ってきた。俺の名前はイアン、15歳。今年から、貴族ばかりが通う学園に入学することになっている。
(これは、よく聞く異世界転生ってやつか?まさか、寝る前にプレイしたBL小説とは・・・それにしても、よりにもよって、イアンって!)
俺は頭を抱えたくなった。イアンの姿を鏡でじっくり見てみた。
金髪の巻き毛と、同じく金色の瞳。見た目が美しいことを鼻にかける、すごく意地悪なキャラクターがイアンだ。嫉妬深く、平民出身のヒロイン、ソラを目の敵にしている。第一王子、レインに近づこうと画策するが、全く相手にされないしょうもないキャラだ。転生前の俺の容姿と比べると、容姿ガチャ当たりすぎて、しばらく自分の美しさに見とれてしまった。
そんなことより、今日は学園の入学式である。
転生したと分かったからには、手首を切り落とされる破滅ルートは回避しなければならない!!と意気込んで登園したのだが····
重大な選択を迫られる場面では、ことごとく自分の意思とは反した行動を取ってしまうのだ。まるで、システムに反した行動は取れないように、物語通りに進んでいた。
数ヵ月後、いよいよ、イアンは第一王子、レインに断罪される時がきた。その後、人目の付かない森の中に連れてこられ、乱暴に地面に転がされた。
「お前の数々の悪事、見逃すことはできない。命だけは助けてやる。しかし、もう二度と悪さができないように、お前の両手首をもらうぞ。」
イアンは、この場面を知っている。レインに手首を切り落とされた後、家からも勘当されたイアンは、道端でひっそりと息絶えるのだ。
このストーリーも変えることはできないと分かっていたが、イアンはこの世界に転生してしまった運命を呪い、涙を流しながら懇願した。
「レイン王子····!どうか、お助けください。自分ではどうしようもなかったんです!!ソラに悪事を働きたくはないのに、体が言うことをきかず──何でもしますから、どうか手を切り落とさないでください!!」
いつもなら、ストーリーと違うセリフは言えないはずなのだが、今日は何故だか自分が思った通りの言葉が出た。
だか、そんなことは今さら全く関係はない。イアンは、手首を切り落とされる時の痛みが想像できず、恐れおののいた。
「·····悪事を働きたくなかっただと!?それではなぜ、あのようなことを───!!本当に、後悔しているのか!?」
「───はい!心から後悔しています。神に誓って、2度と同じ過ちを繰り返しません!!!」
·········ん???レインはこのようなセリフは言わないはずだ。システムのバグなのか!?
イアンは、最後の祈りを込めて、涙を流しながらレインの足にしがみついた。
「レイン様······!!お助けを~!何でもいたします!」
レインは情けをかけてくれているのか、戸惑った表情をし、構えていた剣を鞘にしまった。
「·······クソッ!!2度はないと思え!」
「!?助けてくださるのですか!?!?レイン様ありがとうございます!!」
イアンは泣いて喜んだ。どういうわけか分からないが、初めてストーリーから外れたことが起こっている。
「········ただし、俺にはお前を見張る責任がある。」
「───はい。」
「しばらくは、俺の屋敷で働け。お前は勘当されたからな。もう貴族令息ではなく、ただの侍従だ。特別扱いはしないからな。覚悟しとけよ。」
「───はい!!レイン様!!誠心誠意、仕えさせていただきます!!!」
嘘みたいだが、破滅ルートを回避できた。手首さえ切り落とされないのであれば、勘当されようが、レインの侍従であろうが、全てがマシである。
この日から、イアンの破滅ルートから外れた、新たなルートが幕を明けた。
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