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73話 轟音
しおりを挟む王宮街神殿で作られた聖水を届けに、ソレイユと女性神官のジャンティエスは、荷馬車でゴトゴトとゆられながら騎士団本部へと向かっていた。
コカトリスが出現したと報告を受けた騎士団は、現地へ向かう前に神殿に聖水を用意するよう依頼していたのだ。
「あの… ジャンティエスさん? 私まで神官の服を着てしまって… 本当に良いのかしら?」
神官様のお手伝いをするのは、構わないけれど… 修行も何もしていない私が神官服を来るのは、恐れ多いというか… 図々しい気がして…
友人のジャンティエスに説得され、見習い神官の服を着たソレイユは… 今になって心配になり、服を指でつまんでジャンティエスを上目づかいで見る。
「良く似合ってますよ、ソレイユさん!」
「あの… 今から騎士団の本部へ行くのでしょう? 婚姻の儀に参列して下さった、顔見知りの騎士様もいると思うのです」
「ふふふっ… 大丈夫ですよ、怒られたりしませんから! それに見習い神官の服を着ていた方が、私とどこにでも出入りできますしね」
「はい」
どこにでも出入りできる? それはそれで、問題があるような気がするのだけれど?
困り顔でソレイユは笑った。
ドオオォォォォ――――ンッ…!!!!! ゴゴゴゴッ……
騎士団本部の近くまで来たところで、突然轟音が鳴り響き、ソレイユは椅子につかまりさけび声をあげた。
「キャアァァァ――…!」
「ああっ!! ダメよっ! 落ち着いて! ドゥ—! ドゥ—!」
荷馬車をひいていた馬も轟音に驚き、暴れ出したが… 手綱を持っていたジャンティエスが上手くなだめて馬車をを止める。
「ソレイユさん… 大丈夫ですか?! ケガは?!」
「私は大丈夫です、ジャンティエスさん! そ… それより今のは何ですか?!」
何…? 何が起きたの?!
ソレイユの言葉にジャンティエスはホッ… とため息をつき、轟音が響いた騎士団本部を見た。
「私にも、わかりません… ですが、とてつもなく大きな魔力を轟音と同時に感じました!」
「ジャンティエスさんは魔法を使えるのですね?」
そうか、ジャンティエスさんは神官だから! 私のような一般人とは違って、魔法が使える人が多いのかしら?
「使えると言っても、強くはないので… でもそんな私にも、今のは、ハッキリと感じました! それだけ大きな魔力が爆発したのでしょう」
「すごい音でしたね…? 私もあんなに大きな音を聞いたのは、初めてです…」
嫌な予感がする! だって、騎士団本部から聞こえたわ?! アンバレ様、どうかご無事で…!!
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