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7話 姉マグノリア 

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 クロードとビオレータは、寝室で朝食をとったあと… 先代ソールズ伯爵のクロードの父親に、姉マグノリアの身代みがわりとなったビオレータの事情を説明した。

 マグノリアとクロードの婚約を決めた先代伯爵に… クロードは自分の結婚相手が、父親が決めた婚約者ではなく、ビオレータに変わったことを謝罪する。

『クロード、今はおまえがソールズ伯爵家の当主なのだから、おまえがそう決めたのなら、私は反対しないよ』
 ……と先代伯爵は、どことなくホッ… としたようすで、気持ち良くビオレータを義理の娘として、受け入れてくれることを約束してくれた。



 その後すぐに伯爵家の隣家、ビオレータの実家のデントン家へいくと、のんびりと両親と一緒に朝食をとる、家出から帰宅した姉のマグノリアを見つけ… クロードはマグノリアのほほをムニッ… とつまんだ。

「マグノリア… 君は自分が何をしたか、わかっているのか?」

「な… なによ、クロード! あなたがいけないのよ?!」
 マグノリアは、パシッ…! と自分のほほをつまむクロードの手を、たたき払った。

「君が、どれだけビオレータに迷惑をかけたか、理解しているのかを、私は聞いているんだ、マグノリア…」

 紳士らしくとても優しい声で、おだやかな笑みをうかべて、クロードは姉のマグノリアにたずねているが… となりにいたビオレータは、クロードの顔を見て、ブルッ… と震えあがった。

「・・・っ」
 顔は微笑んでいるけれど… 本当にクロード様は、激怒げきどしているのね…?!

 すぐ近くにいるビオレータには… クロードの瞳がものすごく冷たい、氷のやいばのように光っていて、少しも笑っているようには見えないのだ。

「そ… それは… 優しいビオレータなら、許してくれわよ! ね?! ビオレータ?!」
 さすがにクロードの怒りをマグノリアも感じ取れたらしく… 顔を強張こわばらせ、助けを求めるようにビオレータを見る。

「マグノリアお姉様…」
 ダメよ、お姉様! 激怒しているクロード様に、そんなことを言っては、逆効果だわ…?! ああ怖いわ! こんなに怒ったクロード様を見たのは、大人になってから、はじめてだもの?!

 『お姉様、それ以上は何も言わないで!』 …とビオレータは神様に祈りながら、マグノリアにプルプル… と首を横にふり、サインを送った。

 ビオレータの反応を見て、マグノリアの顔が青ざめ… いつもよりも高い声で、その場にいる人たちに助けを求めるように、マグノリアは言いわけをする。
 
「で… でも、悪いのはクロードなのよ?! クロードはいつも私に、“婚約者ならビオレータのように礼儀正しくしろ” とか… “ビオレータのように大人になれ” とか… とてもひどいことばかり言うのよ?!」

「マグノリア… それは君と違って、ビオレータが立派りっぱ淑女しゅくじょだからだ!」
 ハァ―――ッ… とクロードは大きなため息をつき、マグノリアを威圧いあつするように、腕組みをしてにらみつけた。





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