“代わりに結婚しておいて”…と姉が手紙を残して家出しました。初夜もですか？！

５話 初夜

　窓の下にある、テーブルに置かれた蝋燭ろうそくの明かりは、ちょうど良い薄暗うすぐらさで…とてもロマンチックに見えて、初夜のムードづくりには、ピッタリだ。
　だが、1人で静かにその場所にいると、強い眠気をさそう明るさである。

「本当に今日は、疲れたわ…　なぜ、こんなことになってしまったのかしら…？」
　もう…　へとへと…　少しだけ横になりたいわ……

　結婚式の準備をしているときから、身代みがわりとなったビオレータは、ずっと緊張していたせいか、ベッドに腰をおろしたとたん…
　ドッ…　と疲れに襲われて、ころりと寝転ねころがったら、ビオレータはそのままウッカリ眠ってしまった。




　パタンッ…！　と扉が閉まる音で、ビオレータはふと目をさました。

　ベッドの上に転がったまま、寝起きでぼんやりとしていたら…　クロードがビオレータにおおいかぶさるように、顔をのぞきこんだ。

「あっ！？」
　クロード様？！　ああ、嫌だわ…　私ったら、眠ってしまったのね？！
　
「なんだ…　おきていたのか？　…まぁ、ちょうど良いか！」
　ビオレータの頬ほほをなでると…　クロードは唇にキスをした。

　ドクッ…！　ドクッ…！　ドクッ…！　ドクッ…！　とビオレータの心臓が胸の中であばれだす。

　あまりにも驚いて、ビオレータは言葉をうしない…
　頭の中でパリンッ…！　と何かが壊こわれた。

「・・・っ？！」
　ああっ…　クロード様…？！　クロード様？！　クロード様？！　クロード様―――っ！！　愛してます！　あなたを愛してます！！　

　姉の結婚式で、ボロボロになるまで傷ついたビオレータの心は、不意打ふいうちのようにされたクロードのキスで…　本当の気持ちをおさえられなくなる。



　うす暗い寝室で…

　姉の身代みがわりとなった妹のビオレータは…　姉の初夜で、姉の夫に純潔じゅんけつを捧ささささげた。