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24話 兄弟げんか2 エドガーside
しおりを挟む馬に乗り遠乗りに出かけた時にジュリーの涙を見たエドガーは、元婚約者だった弟に嫉妬の炎を燃やした。
自分でもカッ… と熱くなりすぎだと自覚があったエドガーはジョナサンのえりを放すと…
スゥ―――ッ… ハァ―――ッ… と深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「それでお前は… 何があって酒浸りになったのか、いいかげん話せ。 これ以上、男爵家とお前の間に問題が起きては、私の求婚の妨げとなるだろう?」
もう一度、エドガーはジョナサンにたずねた。
数分前までの怒りを爆発させた威嚇ではなく… エドガーは冷ややかな瞳で威圧してジョナサンを静かに追い詰めるつもりだ。
「兄さん… 本気なのか?」
さすがにジョナサンも怯む。
子どもっぽく拗ねて反抗していても昔からジョナサンが尊敬していた兄が… 一生を左右するかもしれない求婚を自分の元婚約者にしようとしているのだ。
それも何かと対立することが多く、ジョナサンにとって天敵とも言えるジュリーにだ。
「何度も言うが、ここで冗談をいうほど私はひまでは無い!」
「くっ… ははっ… あはははははっ…!! 兄さんがジュリーに求婚だってぇ?! あの真っ黒に日焼けした醜い女に?」
突然ジョナサンはゲラゲラと笑いだした。
「……っ」
この愚か者はまだ酒が抜けてないのか? やはり手加減するのはやめるか。
努力して鎮めていた激しい怒りが… ジュリーを侮辱するジョナサンの言葉でいっきに爆発しエドガーの拳が飛んだ。
ゴツッ…!
「があっ…?!」
汚い侮辱の言葉を吐いたジョナサンの口が、エドガーの拳で最初に封じられ…
ドスッ…! ドスッ…! 続いて、ヒョロリと細いジョナサンの腹部に容赦なく拳がめり込む。
「うぐっ… ぐふっ…! うっ……」
ゴキッ…!
「あ… ぐうっ……!」
最期のとどめはジョナサン自慢の顔の真ん中に打ちこみ、細く高い鼻を綺麗に折った。
「……っこのクソ野郎!! お前がどれだけクズなのかもう少し自覚しろ!」
エドガーの怒りの強さが拳にあらわれ一発では止まらず、顔と腹に3発、4発と… ジョナサンが絨毯に倒れるまで手加減無しでエドガーは拳を打ち込んだ。
それでも理性がきき致命傷を負わせるほどの殴打は我慢したのだから、エドガー的にはかなりの譲歩だった。
「恥を知れ! お前がここまでクズだとは思わなかった! 今までジュリーがどれだけお前に我慢してきたか想像できる。 婚約解消になって正解だった!!」
「ううっ… 鼻が… 僕…の… うううっ… うっ… ひどいよ… 兄さん…っ… うっ……」
自慢の鼻が折れ、ついでに歯も砕けたジョナサンは… 顔を押さえて泣きだした。
「それでジョナサン… そろそろ酒浸りになった理由を話す気になったか?」
フンッ…! とエドガーは鼻をならしながら、もう一度たずねた。
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