38 / 59
37話 淑女をやめる
しおりを挟む
昼食を終え、それぞれの学舎へ戻ろうと食堂から出たところで、ミレイユはクレマンを呼び止めた。
「話したいことがあるの、クレマン…?」
「ミレイユ、何だい…?」
「すぐに終わるから、少しだけ良いかしら?」
「僕は別にかまわないよ」
チラリッ… とクレマンが友人のドミニクを見ると…
「クレマン、僕は先にもどるよ!」
「なら… 私も先に行くわね、ミレイユ」
ドミニクとネリーは、ミレイユとクレマンをその場に残し、廊下をまっすぐ進み、学舎へともどって行く。
「僕たちは少し大まわりして、外から戻ろうか?」
「ええ、そうねクレマン! 歩きながら話しましょう」
「うん」
学舎へ戻る1番の近道は、食堂がある建物の中の廊下を、ネリーとドミニクのようにまっすぐ進み、左右に分かれる渡り廊下から、それぞれの学舎へ戻る順路だが…
ミレイユとクレマンは、他人に話を聞かれたくなかったため、食堂近くの扉から裏庭に出て、少し大まわりをして建物にそって歩き、外から学舎へ向かう経路を選んだ。
周囲に人の気配が無いことを確認してから、ミレイユは口を開いた。
「あのね、クレマン… 私と2人っきりの時は、もっと私のことを考えてほしいの!」
一日、何時間もクレマンと私は、一緒にいるわけではないから… ほんの少しで良いの、私に気持ちを傾けて欲しいわ?!
「え?!」
「さっきのように、ドミニクやネリーが一緒の時は良いの… だけど私と2人だけの時に、論文や勉強のことばかりクレマンが考えていると… 私はとても寂しいし、つまらないから!」
我がままなのは、わかっているわ…? でも、ほんの少しで良いのよ。
私はもっと、私たちの話をしたいの!
ミレイユは腕組みをして、ムスッ… とした顔で、クレマンに不満をぶつけた。
「あっ…! ごめん、ミレイユ… そうか、そうだね?!」
「あなたがせっかく、私の家へ送りむかえをしてくれても… クレマンの心が、何処かに飛んで行ってしまっていては、私たちが一緒にいる意味がないでしょう?」
「そ… その通りだよ! ああ、ごめんよ… 論文や勉強のことばかりに夢中になったりして、僕がバカだったよ! これじゃぁ… ぜんぜん君のためにならないよね?! 君との婚約を守るために頑張ろうと決めたのに?!」
クレマンは顔を真っ赤にして、恥かしそうに頭をポリポリッ… とかきながら、ペコペコッ… とミレイユに頭を下げた。
「私の気持ちを理解してくれて、よかったわ…?! これ以上、あなたに無視されたら… 来月には私から婚約解消を進めて欲しいと、お父さまにお願いしていたかもしれないわ?」
「う゛う゛っ… 本当にミレイユ、ごめんよ?!」
「それとね、クレマン…? もう一つだけ、我がままを言うけれど、良いかしら?」
「えっ…?! 言って欲しいよミレイユ! 今のが我がままだなんて、思わないよ?! 僕を嫌わないでいてくれるなら、もっと聞かせてくれよ?!」
自分は本気だとクレマンは、ウンウン… とうなずきながら両手をにぎり合わせて、ミレイユに懇願する。
「私、淑女をやめようと思うの!」
「はっ?! ミレイユ、それは… どういう意味だい?!」
クレマンはピタリッ… と立ち止まってたずねた。
「話したいことがあるの、クレマン…?」
「ミレイユ、何だい…?」
「すぐに終わるから、少しだけ良いかしら?」
「僕は別にかまわないよ」
チラリッ… とクレマンが友人のドミニクを見ると…
「クレマン、僕は先にもどるよ!」
「なら… 私も先に行くわね、ミレイユ」
ドミニクとネリーは、ミレイユとクレマンをその場に残し、廊下をまっすぐ進み、学舎へともどって行く。
「僕たちは少し大まわりして、外から戻ろうか?」
「ええ、そうねクレマン! 歩きながら話しましょう」
「うん」
学舎へ戻る1番の近道は、食堂がある建物の中の廊下を、ネリーとドミニクのようにまっすぐ進み、左右に分かれる渡り廊下から、それぞれの学舎へ戻る順路だが…
ミレイユとクレマンは、他人に話を聞かれたくなかったため、食堂近くの扉から裏庭に出て、少し大まわりをして建物にそって歩き、外から学舎へ向かう経路を選んだ。
周囲に人の気配が無いことを確認してから、ミレイユは口を開いた。
「あのね、クレマン… 私と2人っきりの時は、もっと私のことを考えてほしいの!」
一日、何時間もクレマンと私は、一緒にいるわけではないから… ほんの少しで良いの、私に気持ちを傾けて欲しいわ?!
「え?!」
「さっきのように、ドミニクやネリーが一緒の時は良いの… だけど私と2人だけの時に、論文や勉強のことばかりクレマンが考えていると… 私はとても寂しいし、つまらないから!」
我がままなのは、わかっているわ…? でも、ほんの少しで良いのよ。
私はもっと、私たちの話をしたいの!
ミレイユは腕組みをして、ムスッ… とした顔で、クレマンに不満をぶつけた。
「あっ…! ごめん、ミレイユ… そうか、そうだね?!」
「あなたがせっかく、私の家へ送りむかえをしてくれても… クレマンの心が、何処かに飛んで行ってしまっていては、私たちが一緒にいる意味がないでしょう?」
「そ… その通りだよ! ああ、ごめんよ… 論文や勉強のことばかりに夢中になったりして、僕がバカだったよ! これじゃぁ… ぜんぜん君のためにならないよね?! 君との婚約を守るために頑張ろうと決めたのに?!」
クレマンは顔を真っ赤にして、恥かしそうに頭をポリポリッ… とかきながら、ペコペコッ… とミレイユに頭を下げた。
「私の気持ちを理解してくれて、よかったわ…?! これ以上、あなたに無視されたら… 来月には私から婚約解消を進めて欲しいと、お父さまにお願いしていたかもしれないわ?」
「う゛う゛っ… 本当にミレイユ、ごめんよ?!」
「それとね、クレマン…? もう一つだけ、我がままを言うけれど、良いかしら?」
「えっ…?! 言って欲しいよミレイユ! 今のが我がままだなんて、思わないよ?! 僕を嫌わないでいてくれるなら、もっと聞かせてくれよ?!」
自分は本気だとクレマンは、ウンウン… とうなずきながら両手をにぎり合わせて、ミレイユに懇願する。
「私、淑女をやめようと思うの!」
「はっ?! ミレイユ、それは… どういう意味だい?!」
クレマンはピタリッ… と立ち止まってたずねた。
24
お気に入りに追加
1,567
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる