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第二十七話  日常の中で

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 吸血鬼ブルーが起こした青月事件が終わった頃の出来事。了は菫と一緒に人の街にある甘味処で団子を食べていた。

「で、青月事件は私が解決したわけ」

 了は身振り手振りしながら事件の顛末を説明した。

「ほーん、吸血鬼ねえ。本当にいるもんだな」

 それを聞いた菫は、わずかに驚いた。吸血鬼が来たと言っても、元々夢幻界には妖怪たちがたくさんいる。菫の反応も珍しいモノでは無かった。そんな菫に了はあることを尋ねる。

「菫、お前なんで事件解決に行かなかったの?」

「めんどうだったからな。月が青くなるだけで大騒ぎしすぎなんだよ人里の奴ら」

 菫の言葉に了はあきれた。

「菫それでも、管理所の事件解決者かよ」

「別に好きでなったわけじゃねーよ」

「え、違うの?」

 了はそれを聞いて驚いた。菫が自主的に管理所に入ったと思っていたからだ。菫は空をぼんやり見ながら話す。

「ああ、わけあってな」

「わけ…… じゃあ昔なにしてたんだ」

「個人記者やっていた。この世界の謎を調べたりな」

「何か意外だな。その調べていた世界の謎って一体何なんだ」

「それはだなあ、この世界に何故、捨てられたモノ不要となったモノなどが集まるのか、ここに来る条件はあるのかだとか。……先導師アカネについてだとかな」

「そうか、なぜ辞めたんだ」

「わけあって言ったろ。まあ大災害でな、色々あってな辞めた」

「家族が死んだとかか?」

「それもあるが…… 知ってしまったんだよ」
 そう語り、菫は俯いた。菫の反応に、恐る恐る了は聞く。

「何を……」

「知らない方が良いこと」

 菫は顔を上げて店員を呼び、お茶を持ってこさせた。お茶は暖かで湯気を出していた。そんなお茶を菫は飲み、先ほどの事を誤魔化すかのようにつぶやく。

「ここのお茶は美味いなあ」

「なあ知らない方が良いって何のことさ?」

 しかし、了は尋ねた。了の言葉に菫は真剣な目つきになり聞き返す。

「お前幸せか……」

「? 今は幸せだけど」

 菫の真剣なまなざしに困惑しながらそう答える了。それを聞いた菫は沈んだ声で話す。

「なら知らない方が良い。知ったら辛い」

「辛い?」

 辛いその言葉が出てきて了は困惑した。その反応を見てあることに気がつく菫。

「……お前そういえば大災害の後にこの世界に来たんだよな」

「ああ……」

「…………」

 菫は少し沈黙した。了はこんな菫を見るのは珍しいと感じた。

「?」

「……言おうと思ったけど止めた」

「なんじゃそりゃ」

 菫の思わせぶりな態度に、了は思わずズッコケた。

「代わりに他の事なら教えてやるよ。お茶が美味くて気分が良いからな」

「うーんじゃあ、お前の性格ってどうしてそうなの」

 了の言葉に菫は勢いよくブフッーとお茶を噴き出す。そして濡れた口を手でぬぐいながら答えた。

「性格かよ……昔からこうさ、生まれつき」

「本当かー、さっきの言えないわけと関係しているんじゃないか」

「……してないねー」

「嘘くさいねえ」

「ほかの質問にしろ」

 それを聞き了は探偵や刑事のドラマの役者がする様に、額に人差し指を刺しながら考えて、尋ねた

「じゃあ、あれだ。騒ぎを起こした奴に必要以上の罰を与えるのはなぜだ? 見てて気分悪いぞ」

「この世界は犠牲の上で成り立っている。なのに面倒なこと起こす奴はおもいっきりやった方が良い」

「……もしかしてその考えもワケあり?」

「ああ」

「よくイライラしてるのも?」

「ああ、何も知らずに生きてる奴や死んだ方が良いやつに対してな」

 菫は小声で、自分に対してもだけど、と付け足した。了には聞こえなかった。

「なら、ワケを周りに教えたらいいじゃん」 

「……教えてもどうしようもない。不要な混乱が起きる。辛いことが起きる」

「わけわからんな」

 菫の言葉に悩んで思わず腕を組む。その了のしぐさを見て菫は語る。

「誰にだって秘密ぐらいはあるさ、了にもあるだろ?」

 その言葉に何も言えなくなってしまう了。そんな彼女を尻目に菫が、

「今日は無駄に話し疲れた帰るわ。じゃあな聞きたがりの了」

 そう言って代金を置いて立ち上がり、別れを告げる。そんな別れ際の菫の言葉に了は反論する。

「最後のはいらねーだろ。菫!」

「そうかい、そうかい」

 菫はへらへら笑いながら甘味処を後にした。了はもやもやした気持ちになり、気分を変えるためこの日団子をたくさん食べた。そのおかげで腹と生活が少し苦しくなった。
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