32 / 63
第二十七話 日常の中で
しおりを挟む
吸血鬼ブルーが起こした青月事件が終わった頃の出来事。了は菫と一緒に人の街にある甘味処で団子を食べていた。
「で、青月事件は私が解決したわけ」
了は身振り手振りしながら事件の顛末を説明した。
「ほーん、吸血鬼ねえ。本当にいるもんだな」
それを聞いた菫は、わずかに驚いた。吸血鬼が来たと言っても、元々夢幻界には妖怪たちがたくさんいる。菫の反応も珍しいモノでは無かった。そんな菫に了はあることを尋ねる。
「菫、お前なんで事件解決に行かなかったの?」
「めんどうだったからな。月が青くなるだけで大騒ぎしすぎなんだよ人里の奴ら」
菫の言葉に了はあきれた。
「菫それでも、管理所の事件解決者かよ」
「別に好きでなったわけじゃねーよ」
「え、違うの?」
了はそれを聞いて驚いた。菫が自主的に管理所に入ったと思っていたからだ。菫は空をぼんやり見ながら話す。
「ああ、わけあってな」
「わけ…… じゃあ昔なにしてたんだ」
「個人記者やっていた。この世界の謎を調べたりな」
「何か意外だな。その調べていた世界の謎って一体何なんだ」
「それはだなあ、この世界に何故、捨てられたモノ不要となったモノなどが集まるのか、ここに来る条件はあるのかだとか。……先導師アカネについてだとかな」
「そうか、なぜ辞めたんだ」
「わけあって言ったろ。まあ大災害でな、色々あってな辞めた」
「家族が死んだとかか?」
「それもあるが…… 知ってしまったんだよ」
そう語り、菫は俯いた。菫の反応に、恐る恐る了は聞く。
「何を……」
「知らない方が良いこと」
菫は顔を上げて店員を呼び、お茶を持ってこさせた。お茶は暖かで湯気を出していた。そんなお茶を菫は飲み、先ほどの事を誤魔化すかのようにつぶやく。
「ここのお茶は美味いなあ」
「なあ知らない方が良いって何のことさ?」
しかし、了は尋ねた。了の言葉に菫は真剣な目つきになり聞き返す。
「お前幸せか……」
「? 今は幸せだけど」
菫の真剣なまなざしに困惑しながらそう答える了。それを聞いた菫は沈んだ声で話す。
「なら知らない方が良い。知ったら辛い」
「辛い?」
辛いその言葉が出てきて了は困惑した。その反応を見てあることに気がつく菫。
「……お前そういえば大災害の後にこの世界に来たんだよな」
「ああ……」
「…………」
菫は少し沈黙した。了はこんな菫を見るのは珍しいと感じた。
「?」
「……言おうと思ったけど止めた」
「なんじゃそりゃ」
菫の思わせぶりな態度に、了は思わずズッコケた。
「代わりに他の事なら教えてやるよ。お茶が美味くて気分が良いからな」
「うーんじゃあ、お前の性格ってどうしてそうなの」
了の言葉に菫は勢いよくブフッーとお茶を噴き出す。そして濡れた口を手でぬぐいながら答えた。
「性格かよ……昔からこうさ、生まれつき」
「本当かー、さっきの言えないわけと関係しているんじゃないか」
「……してないねー」
「嘘くさいねえ」
「ほかの質問にしろ」
それを聞き了は探偵や刑事のドラマの役者がする様に、額に人差し指を刺しながら考えて、尋ねた
「じゃあ、あれだ。騒ぎを起こした奴に必要以上の罰を与えるのはなぜだ? 見てて気分悪いぞ」
「この世界は犠牲の上で成り立っている。なのに面倒なこと起こす奴はおもいっきりやった方が良い」
「……もしかしてその考えもワケあり?」
「ああ」
「よくイライラしてるのも?」
「ああ、何も知らずに生きてる奴や死んだ方が良いやつに対してな」
菫は小声で、自分に対してもだけど、と付け足した。了には聞こえなかった。
「なら、ワケを周りに教えたらいいじゃん」
「……教えてもどうしようもない。不要な混乱が起きる。辛いことが起きる」
「わけわからんな」
菫の言葉に悩んで思わず腕を組む。その了のしぐさを見て菫は語る。
「誰にだって秘密ぐらいはあるさ、了にもあるだろ?」
その言葉に何も言えなくなってしまう了。そんな彼女を尻目に菫が、
「今日は無駄に話し疲れた帰るわ。じゃあな聞きたがりの了」
そう言って代金を置いて立ち上がり、別れを告げる。そんな別れ際の菫の言葉に了は反論する。
「最後のはいらねーだろ。菫!」
「そうかい、そうかい」
菫はへらへら笑いながら甘味処を後にした。了はもやもやした気持ちになり、気分を変えるためこの日団子をたくさん食べた。そのおかげで腹と生活が少し苦しくなった。
「で、青月事件は私が解決したわけ」
了は身振り手振りしながら事件の顛末を説明した。
「ほーん、吸血鬼ねえ。本当にいるもんだな」
それを聞いた菫は、わずかに驚いた。吸血鬼が来たと言っても、元々夢幻界には妖怪たちがたくさんいる。菫の反応も珍しいモノでは無かった。そんな菫に了はあることを尋ねる。
「菫、お前なんで事件解決に行かなかったの?」
「めんどうだったからな。月が青くなるだけで大騒ぎしすぎなんだよ人里の奴ら」
菫の言葉に了はあきれた。
「菫それでも、管理所の事件解決者かよ」
「別に好きでなったわけじゃねーよ」
「え、違うの?」
了はそれを聞いて驚いた。菫が自主的に管理所に入ったと思っていたからだ。菫は空をぼんやり見ながら話す。
「ああ、わけあってな」
「わけ…… じゃあ昔なにしてたんだ」
「個人記者やっていた。この世界の謎を調べたりな」
「何か意外だな。その調べていた世界の謎って一体何なんだ」
「それはだなあ、この世界に何故、捨てられたモノ不要となったモノなどが集まるのか、ここに来る条件はあるのかだとか。……先導師アカネについてだとかな」
「そうか、なぜ辞めたんだ」
「わけあって言ったろ。まあ大災害でな、色々あってな辞めた」
「家族が死んだとかか?」
「それもあるが…… 知ってしまったんだよ」
そう語り、菫は俯いた。菫の反応に、恐る恐る了は聞く。
「何を……」
「知らない方が良いこと」
菫は顔を上げて店員を呼び、お茶を持ってこさせた。お茶は暖かで湯気を出していた。そんなお茶を菫は飲み、先ほどの事を誤魔化すかのようにつぶやく。
「ここのお茶は美味いなあ」
「なあ知らない方が良いって何のことさ?」
しかし、了は尋ねた。了の言葉に菫は真剣な目つきになり聞き返す。
「お前幸せか……」
「? 今は幸せだけど」
菫の真剣なまなざしに困惑しながらそう答える了。それを聞いた菫は沈んだ声で話す。
「なら知らない方が良い。知ったら辛い」
「辛い?」
辛いその言葉が出てきて了は困惑した。その反応を見てあることに気がつく菫。
「……お前そういえば大災害の後にこの世界に来たんだよな」
「ああ……」
「…………」
菫は少し沈黙した。了はこんな菫を見るのは珍しいと感じた。
「?」
「……言おうと思ったけど止めた」
「なんじゃそりゃ」
菫の思わせぶりな態度に、了は思わずズッコケた。
「代わりに他の事なら教えてやるよ。お茶が美味くて気分が良いからな」
「うーんじゃあ、お前の性格ってどうしてそうなの」
了の言葉に菫は勢いよくブフッーとお茶を噴き出す。そして濡れた口を手でぬぐいながら答えた。
「性格かよ……昔からこうさ、生まれつき」
「本当かー、さっきの言えないわけと関係しているんじゃないか」
「……してないねー」
「嘘くさいねえ」
「ほかの質問にしろ」
それを聞き了は探偵や刑事のドラマの役者がする様に、額に人差し指を刺しながら考えて、尋ねた
「じゃあ、あれだ。騒ぎを起こした奴に必要以上の罰を与えるのはなぜだ? 見てて気分悪いぞ」
「この世界は犠牲の上で成り立っている。なのに面倒なこと起こす奴はおもいっきりやった方が良い」
「……もしかしてその考えもワケあり?」
「ああ」
「よくイライラしてるのも?」
「ああ、何も知らずに生きてる奴や死んだ方が良いやつに対してな」
菫は小声で、自分に対してもだけど、と付け足した。了には聞こえなかった。
「なら、ワケを周りに教えたらいいじゃん」
「……教えてもどうしようもない。不要な混乱が起きる。辛いことが起きる」
「わけわからんな」
菫の言葉に悩んで思わず腕を組む。その了のしぐさを見て菫は語る。
「誰にだって秘密ぐらいはあるさ、了にもあるだろ?」
その言葉に何も言えなくなってしまう了。そんな彼女を尻目に菫が、
「今日は無駄に話し疲れた帰るわ。じゃあな聞きたがりの了」
そう言って代金を置いて立ち上がり、別れを告げる。そんな別れ際の菫の言葉に了は反論する。
「最後のはいらねーだろ。菫!」
「そうかい、そうかい」
菫はへらへら笑いながら甘味処を後にした。了はもやもやした気持ちになり、気分を変えるためこの日団子をたくさん食べた。そのおかげで腹と生活が少し苦しくなった。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
第六王子は働きたくない
黒井 へいほ
ファンタジー
カルトフェルン王国の第六王子、セス=カルトフェルンは十五歳になっても国のために働かないロクデナシだ。
そんな彼のためを思ってか、国王は一つのことを決めた。
「――オリアス砦をお前に任せよう」
オリアス砦は、隣接している国との関係は良好。過去一度も問題が起きたことがないという、なんとも胡散臭い砦だ。
縛り上げられたセスに断る権利などなく、無理矢理送り出されてしまうのであった。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。
仰木 あん
ファンタジー
継母に苛められ、義理の妹には全てを取り上げられる。
実の父にも蔑まれ、生きる希望を失ったアメリアは、家を抜け出し、海へと向かう。
たどり着いた崖から身を投げようとするアメリアは、見知らぬ人物に手を引かれ、一命を取り留める。
そんなところから、彼女の運命は好転をし始める。
そんなお話。
フィクションです。
名前、団体、関係ありません。
設定はゆるいと思われます。
ハッピーなエンドに向かっております。
12、13、14、15話は【胸糞展開】になっておりますのでご注意下さい。
登場人物
アメリア=フュルスト;主人公…二十一歳
キース=エネロワ;公爵…二十四歳
マリア=エネロワ;キースの娘…五歳
オリビエ=フュルスト;アメリアの実父
ソフィア;アメリアの義理の妹二十歳
エリザベス;アメリアの継母
ステルベン=ギネリン;王国の王
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる