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⑥ ボクの出した答え

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あれから ずーと考えてるけど、いまいち納得、のいく解答が出せないでいた。
心は一向に 晴れないまま、モヤモヤした毎日を送っていた。
そんなわけで、ささいにことにも 腹を立てる毎日。

『もうダメかも…しれない~』
そんなふうに 弱音を吐き出したボクに、
再び 救いの手が…伸ばされた。  

学校で 委員会活動の時間に、
久しぶりに リク先輩と顔を合わせたのだ。
「よう! リョウタ」
いきなりの名ざしに ビクリと 体をフルわせる。

「なに ビビってんだよ!
それとも、オレになんか怒られるようなことでもしたのか?」
茶化すように 非難ヒナン され
「そんなことあるわけないじゃないですか‼
ってか、いきなり名前呼ばれたら ビビるでしょ⁉フツー」
ありがたいことに 先輩の口調に引きずられるようにして、、ボクもかしこまらずに 対応することが できていた。
「な、コトねー(無い)よ!
じゃあ、毎回 呼ぶ前に 【今、呼んでもいいですか?】 っておウカガいたてるのか?」
「はぁ~、もう いいです‼」
夫婦漫才メオトマンザイみたいになってしまった。
「ふぅ~…」 ボクが深く、ため息をついていると。

「ところで」
その一言で 空気の流れが変わった。
先輩は 「結論…」 言いかけて、チラリとボクの顔を見やり
「全然 スッキリした顔してねー(ない)わ!」
ボクの返答も聞かずに 自己完結ジコカンケツした。
「なんか わかんないこと あった?」
心配そうに タズねてくる先輩。
その手元では、先ほど配られた委員会の資料が、セワしなく 丸められている
「いや、特に 悩むような内容でもなかったでしょ…委員会」
なんとなく 何を尋ねられているのかは、わかってるクセに、ふれられたくなくて、ワザと はぐらかしてみる。
「オマエ!そんな…今の委員会のことじゃねーよ! 
この間、連れてった家でのことだよ!」
けれど、先輩は 見事に はぐらかされては くれなくて、
ワリと テッパンの反応を返してきた。
『やっぱ、ダメだったか…』 
ボクは冷や汗をかきながら、ガックリと 肩を落とした

「あーぁ、それね…」 わずかに声が トーンダウンする。
「とくにコレ! っていうのは、ないんだー。
【競争が必要なこと】とか【そんなに 一番にこだわる必要ない】とか、
ワリと 全体的に わかりやすかったと思うし…」
「なら、なんで悩んでんだよ!」 
すかさず 先輩に ツッコミを入れられる。
「なんとなく…なんだよねー…
頭では、キチンと答えが 出てるんだと思うんだけど…
心がねぇ… なんか、モヤモヤしてて、うまく整理つかないんだよねー」
「そうか…」 
ボクの答えに 先輩も 口を閉じてしまう。
しばらく腕を組んだまま、考え込んでしまった先輩。
やがて 何かを思いついたのか? 
ポン!と 手のひらを叩くと
「なら、めてみるっていうのは どうだ?」 
めるー?」 
今にも 飛び上がるのではないかと思うほど、声が うわずる
そんなボクに動じる様子もなく、先輩は 淡々タンタンと説明を続ける。
「そう。自分で、自分をめるんだよ‼」  
「こう…ぬいぐるみか、何かを 目の前に置いてさー。
自分は、そのぬいぐるみになったつもりで…
【リョウタって人間】を、冷静に…客観的に見てみるんだ。
【頑張ってるところ】とか、【ダメだったところ】とか…
になったつもりで、厳しく判定するんだよ、自分を!」
身振り手振りを まじえて、力説する先輩。
「でも、それ したら なにか変わるの?」
感じた疑問を ストレートに先輩にぶつけてみる。
すると先輩は、スッと 顔の前に人差し指を立てて
「【自分の姿が、ハッキリ見える】ようになる。
【あぁ、オレ けっこう頑張ってるじゃん】とか【もっと こうした方が良かったな】とか…かな⁉」
「何を隠そう。オレも、時々やってんだ。
だから、やり方とか わかんなかったら、気軽に聞いてこいよ!」
「それって…やっぱり… あの おじいさんから教わったの?」
「まあな。実は、あの人…
オレ、ひそかに お師匠さまって思ってんだよ」
「まあ、それは…置いといて!
もしかしたら、それで オマエのそのモヤモヤが 晴れるかもしれないし、全然 変わらないかもしれない。
まあ、どれくらい効果あるかは わかんないけど…、
何もやらないよりは、マシじゃねーか?」
「それは、そうかもしれないけど…」
言葉をにごした。うやむやにしたまま 
「ところで…」
別の…全然ちがう話に誘導ユウドウして、それとなく 話題をそらす。


++++++++++++++

その日、学校からの帰り道。
昼間の 先輩とのやりとりを思い出していた。
このまま 心が落ち着かないままでいるより、
先輩が教えてくれた 自分を見直す行為をやってみようかなって思うんだけど…いまいち、勇気が出せない。 
『意外に効果があるかも知れないなぁ…』
『うーん…でもなぁ…』
『うまくいくかなぁ…』
『ちゃんと できない気がするんだよなぁ…』
『試してみて…もっと落ち込むことになったりしないのかなぁ…』 
『ホントに 大丈夫なのかなぁ…』
なんだかんだと理由をつけて、なかなか踏ん切りのつかない自分にだんだんイラついつくる。
『あぁ…もう、とりあえずやってみりゃいいじゃん‼
それで、誰かに迷惑かけるわけでもないし…』

そうと決まれば、気の変わらないうちに動きだしてしまおうと、ボクは、家までの道のりを 走って帰った。


          おしまい






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