上 下
1 / 6

① おじいさん…ダレ?

しおりを挟む

モクモク…モク、モク…
白い煙がはれると…そこに見知らぬ老人が立っていた。
真っ白な…何もない空間に リンと立つ その人は、一目ヒトメ で おじいさん とわかる姿スガタ をしていた。
頭と口元の毛は、白に変わってしまっており、無数にコブのついた杖を 手にしていた。
完全に ケムリが無くなると、おじいさんは、ボクに 何かをカタ りかける。
しかしその声は、小さいうえにモゴモゴと口ごもっていて とても聞き取りづらいものだった。
ボクは、仕方なく 近づくことにした。話の内容を聞き取るために。
正直にいうと、あまり関わり合いに なりたくは無い 感じだった。
しかし、ボクの中のなけなしの良心リョウシンが、【お年よりには 親切にするべき】 と、警告ケイコクしてきたのだ。 

「おじいさん、今、なんて言ったの?」
ボクが顔を見上げながら たずねると、おじいさんは目を細め しわくちゃの顔をほころばせた。
「りょうた、大きくなったのぅー」
シミジミと口にしながら、手を伸ばして ボクの頭をなであげた。
「もうすぐ、りょうたの誕生日じゃから、プレゼントを届けにきたんじゃ」 と続ける。
「プレゼント?⁇………ボク、そんなの いらないよ」
プレゼントの言葉に |一瞬《イッシュン 心がおどった。
しかし、ボクはそこで ハタと気づいてしまったのだ。
得体エタイの知れない人からもらうプレゼントだ。良いものであるはずがない ということに。
今までの行動から推察スイサツすると、自分の祖父という可能性が浮上してくる。
だが、あいにくというか? 幸いなのか?
両親の親、いわゆるは、双方とも健在なのである。
となると 【これはいったいダレ?⁇】 という結論にいたる
そんなボクの疑心など、どこ吹く風のような涼しい顔で
「りょうたは、ずいぶんと謙虚ケンキョ なんじゃなぁー。
感心感心…」 
にこにこ顔でうなづきながら、手では 長いあごヒゲを 上下に しごきあげていた。
「じゃが、魔法が使えるとしたらどうする?」
ところが、それまでの 穏やかさがウソのように 
突然、ボクの心を ゆさぶってきた。
「えっ⁉ 魔法…使えるの?」 例外なく ボクは、食いついた。
おじいさんは、そんなボクを 満足そうに見やり、
 とうなずく。
それを確認して ボクの体の熱は、一気に 沸騰ふっとうする。 ほおは赤らみ、胸は、ドクドクと心音を高ぶらせてくる。
「ただし、一度だけじゃ。
一度だけしか使えない 強い魔法なのじゃ。
特に りょうたは 普通の人間じゃから、ただの一回 使用するだけでも 大きく 体力が削られてしまう。
じゃから、一度しか使えないのじゃ」
いろいろと説明してくれたが、一度 舞い上がってしまった
ボクの耳には、そんな事がら 入ってくるはずもなく。

「じゃから…よく考えてえて使うのじゃよ」
気づくと、それだけを言い残し…おじいさんの姿は消えていた。

+++++
気づくと ぼくは…布団の上にいた。
自宅の…自分のベッドの上で、体を横たえていた。
「全部  ユメだった…のカナ⁇」
つぶやいた ひとりごと は、真っ白なかべ
あっけなく 吸い込まれていった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あわてんぼう パパ

hanahui2021.6.1
児童書・童話
あたしは、パパと2人ぐらし。 だから、【あたしが しっかりしなくちゃ!】って頑張ってるんだけど…。

ネコじいちゃん

hanahui2021.6.1
児童書・童話
あれれ⁉︎ まだ、夢…見てる? でも…。

カエルのねがいごと

hanahui2021.6.1
児童書・童話
ボクらカエルは、雨が大好き。 空から落ちてくるしずくは、キラキラしていて とてもキレイ。 その上 体まで、サッパリさせてくれるスグレモノ。 そう思っていたら ある時 教わったんだ。 雨よりキレイな 雪ってヤツを…

ファー・ジャルグ 北の国のお話

日比谷ナオキ
児童書・童話
アイルランドに存在する妖精、ファー・ジャルグの話を元に、作成した話です。本来は絵本として作成したものなので、非常に短い作品です。 ある北の国の話。北の国の森には、真っ赤な帽子と真っ赤なマントを羽織った不思議な精霊、ファージャルグがいるのです。彼は度々人の前に姿を現して、いたずらをするのですが、旅人が森で迷ったりしている時は助けてあげたりします。そんな精霊と、ある二人の男のお話です。

おなら、おもっきり出したいよね

魚口ホワホワ
児童書・童話
 ぼくの名前は、出男(でるお)、おじいちゃんが、世界に出て行く男になるようにと、つけられたみたい。  でも、ぼくの場合は、違うもの出ちゃうのさ、それは『おなら』すぐしたくなっちゃんだ。  そんなある日、『おならの妖精ププ』に出会い、おならの意味や大切さを教えてもらったのさ。  やっぱり、おならは、おもっきり出したいよね。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

Sadness of the attendant

砂詠 飛来
児童書・童話
王子がまだ生熟れであるように、姫もまだまだ小娘でありました。 醜いカエルの姿に変えられてしまった王子を嘆く従者ハインリヒ。彼の強い憎しみの先に居たのは、王子を救ってくれた姫だった。

「羊のシープお医者さんの寝ない子どこかな?」

時空 まほろ
児童書・童話
羊のシープお医者さんは、寝ない子専門のお医者さん。 今日も、寝ない子を探して夜の世界をあっちへこっちへと大忙し。 さあ、今日の寝ない子のんちゃんは、シープお医者んの治療でもなかなか寝れません。 そんなシープお医者さん、のんちゃんを緊急助手として、夜の世界を一緒にあっちへこっちへと行きます。 のんちゃんは寝れるのかな? シープお医者さんの魔法の呪文とは?

処理中です...