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⑦話し合い

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母さんとの ひともんちゃくに、区切りがつくと。
ぼくは じいちゃんに会うため、はあちゃんの部屋を おとずれる。

いつものように 湯呑み茶碗 片手で、座布団の上に ちょっこんと座っていた。
そんな じいちゃんは、ぼくの姿をみとめると 開口一番。「ああ、、人にもどれたのか。良かったな‼」 と、
しげしげと ぼくを見つめた。
そんな じいちゃんに 近づき、
【昨夜の猫又のこと】 や 【今朝の出来事(しゃべれなかったこと)】、それから【先ほど考えていたこと】などを 洗いざらい しゃべった。
今朝、困っていた声も。人にもどれた今では、キチンと 出せるように なっていた。
ずっと 口をはさまずに聞いていた じいちゃんだったが、
ぼくが、すっかり 話し終えたことを 確信すると

「人というのは、千差万別(せんさばんべつ)。十人十色(じゅうにんといろ)なんじゃよ」 おだやかに そう告げた。
しかし、 何も反応できず ポカン!と、しているぼくを見て
「今回の件。
オマエにとっては 大変なことだった のかもしれん。
じゃが、
ワシにとって ネコに変わってしまったことは、
それほど 苦にはなっておらんのじゃよ」 と、つけ足した。
「この度の 【人からネコに変わる】現象で、被害にあっているのは 知っているかぎり ワシとオマエだけじゃ。
偶然だと信じたいが、皮肉なことに、同じ血すじ…身内の間でのみ おこっておる。
だというのに…
お前とワシとで、これだけの思い違いが出ておる。同意見になっても、なんら おかしくはない状況だというのに。
なぜだと思う?」
じいちゃんは、ぼくに考える時間を与えようとしているのか?
一度 そこで、口を閉じる。
そして、穴でも開いてしまうのではないか?と、疑いたくなるほどに マジマジと ぼくを見つめた。

しかし、ほどなく また 口を開く。
「それは、人というのは、さまざまなな要因で コロコロと 意見を変える生き物 だからじゃ。
育った…国や、人種、年齢、性別など 
有りとあらゆる物質や状況で、感情が 180度 変わる。その時 置かれている環境でも、また 違ってくるじゃろう。ほぼ それと同時に、考えも変わるのじゃ。
だからと言って、それが【間違っておる】とも言いきれん。
それはなぜか?というと
もしも?皆が、同じ考え方をする人たちばかりだった としたら、
将来、オマエが困っている時に 誰にも助けてもらえないかもしれんな。
まぁ!もし本当に そんな世界が現実におこったら、
その時は実際 何も身動きとれないがな!

だから気軽に、人の意見を否定してはいけない。
ま、これは理由の一つでしかないがな!
とりあえずオマエは
人というのは、千差万別なのだ。と。
人間は、いろいろ 多種多様な考え方をするから十人十色で、おもしろいのじゃとだけ覚えておきなさい。
【みんな違って みんな良い!】 のじゃよ。
決して 自分と意見が違うからといって、それを否定してはならんのじゃ。
【袖 触り合うも多少の縁】 と言って
色んな人と 知り合う可能性があるから、人生は 楽しいとも言える。
要するに、何が言いたいかというと
自分が辛いからといって、他人も同じ だと思わないことじゃ
そして他人の考えや感情も、尊重することも大切じゃ。
なにをするにしても、自分が一番だ と【ひとりよがり】にならないこと。
そんなわけで、ワシとオマエの感性が違うのも 当たり前。
猫のままであっても、ワシは、ちっとも困っておらん」
じいちゃんは、そう言って しめくくった。
だから、てっきり もう話は終わったものだと思っていた。
なのに…
「でも、ワシのことまで 考えてくれて ありがとうな。
けっこう 嬉しかったぞ!」
突然、ぐしゃぐしゃに顔をくずし、ぼくを撫でた。…
「なッ…」
『完全に ふいうち‼』  
 『イヤ もしかしたら わざと か?』
ぼくは 顔を真っ赤にして、何も言うことが 出来なかった。
++++++++++++++
とりあえず、じいちゃんとの話も終わり、 
トボトボ…と 自分の部屋へと 帰っていた。
頭の中では、先ほどのじいちゃんの話を 思いかえしていた

結果的に、ぼくとじいちゃん。
同じようにネコになってしまったけど、それぞれの思いは違う。
でも、それは間違いじゃなくて 仕方のないことだって。
ぼくとじいちゃんでは、年も 育った環境とかも 同じではないのだから、違う意見になって 当たり前なのだと言っていた。
ようするに、ぼくにとっては大変だったけれど、じいちゃんんは やはりそのままで良いと…ネコのままで ちっとも 困っていないと言っていた。
だから終わり。
もう、じいちゃんのことで悩むのはおしまい。
あとは、自分の部屋に帰って、
じっくりと 人にもどれた喜びを 噛みしめようではないか‼
ぼくは、タンタタンとスキップしそうになる衝動を抑えながら 部屋へと急いだ。


          おしまい。




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