上 下
15 / 30

15日目(来ない……)

しおりを挟む
 彼女の名はラフィ。
 時刻はすでに日付が変わる直前。


「……ハァ。今夜はもう来ないのでしょうか」

「――ほう、誰を待っているのです?」

 ヒョコ。


「あ、あなたは……!」
「どうも、僕です」

 今日も今日とて現れた男。
 しかし、その笑顔はいつもと違ってあからさまにニヤけていた。

「わかりますよ。たしかに昨日の僕はかっこよかったですからね」
「ち、違います、別にあなたのことを待っていたわけではありません! む、むしろ今夜は静かに過ごせてよかったなとホッとしていたころです!」
「ほう。では助けられたとき、僕のことを頬を赤く染めつつうっとりした表情でやや目じりに涙を溜めながら見つめていたのも違う、と?」
「なッ!?」
「フフ。いいんですよ、そんなに恥ずかしがらなくても。好きになったならハッキリそう言った方がいいです」
「そ、そんなこと……」
「というわけで、今日はまた姫様にプレゼントをお持ちしました」

 そう言って、男はいかにも宝石でも入っていそうな小箱を取り出した。


「えっと、さすがにちょっと早すぎるのでは……?」
「いえ、こういうのは早い方がいいです」
「で、でもまだ私自身、この気持ちがなんなのかハッキリとは……」
「大丈夫です。僕が教えます」
「……!」

 男の力強い言葉に、つい小箱を受け取ってしまうラフィ。

「さあ、開けてみてください」
「はい……」


 パカッ。


「…………これは、なんですか?」

 震える声で、ラフィは訊いた。

「手裏剣です」

 男はドヤ顔で答えた。

「見ればわかります。なぜこれを私に、という意味です」
「なぜって……なりたいんですよね、忍者?」
「……はい?」
「ピンチを救ってくれた忍者への憧れ。わかります。かくいう僕が忍者を目指したのも師匠に危ないところを助けてもらったのがきっかけですから。さあ、姫様もまずは基本の手裏剣から――」
「始めません。そしていりません。お引き取りを」
「そうですか。しからば」

 シュバッ。




「…………ばか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...