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「充分寝たから大丈夫。でも、雪也は大丈夫に見えない。顔、本当に赤いよ?」
 いつから起きていたのかわからないが、さほど起床から時間が経っていないだろうに雪也は既にどこか疲れているように見える。どうして、などと考える必要も無い。周は思わず寝床を振り返って深く眠っている浩二郎を睨みつける。だがそれもまた、雪也が苦笑してポンポンと周の肩を優しく叩きながら周の視線を浩二郎から逸らせた。
「今日は少し暑いから。本当にそれだけだよ。気にしないで。さて、周が寝る気が無いなら朝ご飯をどうするか一緒に考えようか。今日は何が食べたい?」
 暑いだけ、と繰り返した雪也は、ゆったりとした口調で朝食へと話を向ける。周は雪也の体調から話を逸らされたと僅かに唇を噛むが、仕方がないと息をついて「たまご粥にしようか?」と告げた。雪也の望み通り食事の話にはしたが、体調のことは決して忘れないとばかりの返事に、雪也は困ったとばかりに苦笑する。こんなにも心配してくれている周に対しての罪悪感が胸の内に渦巻くが、すべてを明かすことはできない。
 周は子供だから。これは雪也がしなければならないことだから。そんな風に、雪也は己の心に幾つも幾つも言い訳をして、本心を覆い隠しながら「かさ増ししなくても、お米はそれなりにあるよ?」なんて口にした。
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