必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 己の手を優しく包む弥生の手をポンポンと撫で、下がって良いとゆっくり手を振る。頭を垂れて立ち上がった弥生に視線を向けた。
「弥生……」
 呼ばれて、弥生は振り返る。茂秋はこの年の近い友人の姿を目に焼き付けるように、ジッと見つめた。
「……さらばじゃ」
 すべてを悟ったその言葉に、弥生は僅か、クシャリと顔を歪ませる。無言で頭を垂れ、部屋を出ていった彼の姿に茂秋はクツリ、クツリと笑った。
 最後まで、子供のような足掻きをしよってからに。
 シンと静まり返った部屋に深く息をつく。ボンヤリと天井を見つめていれば、どうしてか武衛に残してきた静宮の姿が見えた。
 白い肌の、儚げな人。薄桃色の衣がよく似合う、どこか寂し気で、けれど笑うと鈴が転がるように、可憐な人。
 これからもっと、もっと寄り添って、支え合って、愛し合えるはずだった。二人ともまだ若いのだから、共に歩む時間はいくらでもあるはずだった。けれど、もはや一目会うことも叶わない。――もう、あなたと共に時を歩むことはできない。
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