必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 雪也はもちろん、周も弥生たちの訪いは心のどこかで待ち遠しいものであり、彼らと過ごす時間は楽しいものであったが、おそらくこの庵で一番に彼らの訪いを心待ちにしているのは由弦であろうと思うまでに、そう時間はかからなかった。
 雪也が薬研の前で薬を調合し、周は米を炊いていて、庭の手入れをし終わった由弦はサクラと遊んでいる。そんな中で微かに響いた馬の嘶きに、真っ先に顔を上げたのは由弦だった。
「紫呉が来た!」
 パァッと太陽のように顔を輝かせて、由弦はサクラを抱き上げると走り出し、庵の扉を勢いよく開けて飛び出した。聞こえてきた「しぐれぇぇぇぇぇぇ!」という叫び声に雪也と周は顔を見合わせて苦笑する。雪也は手早く作り終えた薬包を棚に仕舞うと立ち上がり、外へ向かった。
「弥生兄さま、優さま、お仕事お疲れ様です」
 どうしてそうなったのか不明であるが、紫呉は由弦を抱き上げて楽しそうに話をしているため、雪也は馬を繋いでいた弥生と優に声をかけた。弥生と優は大量に持ってきた食材を馬から降ろし、雪也を促しながら庵の中へ向かう。二人と一匹の世界になっている紫呉と由弦は、一先ずその場に放っておいた。
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