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「貴様ァァッッ! 急に何をするッ!!」
 唾を飛ばして怒鳴りつける男に、雪也にしたことはどうであれ、急に蹴り飛ばされればそんな反応にもなるだろうと周りにいた者達は妙に冷静な感想を抱くが、由弦と周は怒りを倍増させて同時に振り向いた。
「うっさいんだよクソ変態ッ!」
「そっちこそ雪也に何してるんだクソ変態ッ!!」
「さっきからクソ変態クソ変態と言いやがってッ。いい加減にしねぇと叩っ切るぞッ」
 脅すように刀の柄に手をやった男であるが、言われた由弦と周はクソ変態をクソ変態と言って何が悪いとばかりに睨みつけている。このままではせっかく雪也が事を納めたというのに、また騒ぎが起こると皆が眉根を寄せた時、今にも噛みつかんとする犬のように牙を剝いていた由弦と周の肩が小さくポンと叩かれた。
「二人ともありがたいけど、その辺にしておこう」
 穏やかな口調に二人が振り返れば、雪也がいつもの綺麗な笑みを浮かべている。
「でも雪也――ッ」
 雪也を侮辱したままだなんて許せないと由弦が言い募ろうとするが、雪也はその怒りを鎮めようとするかのように由弦の頭を撫でた。
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