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「こうすることに歳など関係ないでしょう? 夫婦が仲良くあるための触れ合いなのですから、誰が何を言うこともありません。たとえ年下であったとしても、私はあなたの夫になるのですから」
 優しく髪を撫でるルイはとても楽しそうだ。彼の言葉を否定するということは、今の妹夫婦を否定することになるため、アシェルは口をつぐむしかない。むぐぐ、と渋面を作りながらも動けないアシェルにルイは微笑み、その頬をくすぐった。
 アシェルの気持ちは別として、傍から見れば穏やかで甘い空気が流れる。そこにベリエルがやって来た。腕には先程の茶色いネコを抱いている。
「失礼いたします。お風呂と食事を済ませて、お連れしました」
 どうぞ、とベリエルは優しくネコをアシェルの膝の上に乗せて礼をすると、また邪魔をしないように下がっていった。思わず落ちないよう抱き留めたアシェルは、腕の中で大人しくしているネコに視線を向ける。お風呂に入ってフワフワな毛並みになったネコは、その首に可愛らしい桃色のリボンをつけられていた。
「綺麗にしてもらったんだな。お腹いっぱいになったか? 小さなお姫様」
 微笑むアシェルに何かを察したのか、ジッとアシェルを見つめていたネコは、にゃーと可愛らしく鳴いた。不安定な膝の上であるのに、アシェルの方へ必死に手を伸ばす姿がいじらしい。ネコの手を優しく握りながら、落とさぬよう抱き寄せて柔らかな毛並みを撫でる。小さく微笑んで、アシェルは瞼を閉じた。
「ひとつ、お願いがある」
 我儘どころか、望みも口にしないアシェルがお願いだなどと珍しい。どうぞ、と促したルイに、アシェルは瞼を開いて茶色のネコを見つめた。
「……僕のこと、フィアナには言わないでほしい」
 アシェルの今を知れば、フィアナはきっと心配するだろう。そしていつか、そう遠くない未来に絶望を味合わせてしまうことになる。
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