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「あなたを不安にさせる気はありません。どうか落ち着いてください。いつから、でしたよね? その問いには、最初からとお答えしましょう」
「嘘だッ! わかっていて結婚なんて申し込むわけがないッ!」
 それも国王の許可が必要な、同性なんて。
「いいえ、嘘は言いません。わかっていて、あなたと結婚したいと陛下に願い出ました」
 それも、小国の鎮圧に出る前から。ルイからすればアシェルと結婚する許可を貰うために鎮圧で武功を上げたとも言える。
「なぜ……。わかっていたなら、なおさら……」
 ルイにとってこの結婚は、なんの利益にもならない。むしろ莫大な損失を被る可能性もある。貴族としても、彼個人としても。
「あなたは私が結婚を申し込んだ時からずっと損得ばかりを考えている。自分の損得ならまだわかりますが、私の損得ばかりだ。そんなものは関係なく、ただ私があなたを幸せにしたいからだとは僅かも考えてくださらない」
 ギュッ、とルイがアシェルの手を掴む。絶対に離さないというかのようなそれに、アシェルは視線を彷徨わせた。
「あなたがこの結婚を唐突だと思うのは、無理はありません。ただ、私はあなたを知っている。釣書なんて必要ないくらい、知っているのです。あなたを、ずっと見てきたのですから」
 あの時、初めて会ったあの時に感じたのは確かに失望だった。彼もどれほど綺麗なことを言おうと所詮は貴族なのだと。けれどルイにあのようなことを言ったのはアシェルが初めてであったからだろうか、ルイは無意識のうちにアシェルを視線で追っていた。何年も、何年も。
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