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 花を見に行きませんか? と穏やかに微笑むルイに誘われて、アシェルは屋敷の裏にある庭を初めて目にした。
 ノーウォルトの屋敷も大きなものであるが、ロランヴィエルは更に大きく、未だにアシェルは全てを把握していない。表の庭だけではなく裏にも庭があるのかと驚き、庭師は大変だな、などといやに現実的なことを考えたが、裏の庭を目にした瞬間にそんな現実的なことなどすべて忘れて大きく目を見開いた。
「すごい……」
 人の手が入っているからこその美しさであるのは理解しているのに、それをまったく感じさせない自然さで花々が咲き誇っており、太陽の光を浴びて花弁が輝いている。範囲こそ小さくはあるかもしれないが、まるで人々が思い浮かべる天上の楽園のようなその庭にアシェルは「すごい」以外の言葉は見つからないと言わんばかりに繰り返し呟いた。
 そんなアシェルの様子に微笑んで、ルイは殊更ゆっくりと車椅子を押す。
「ここは表と違って完全な私的空間として手入れしている庭ですから、けっこう好き放題にしているのです。アシェルも何か植えたい花があれば、遠慮なく言ってくださいね」
 テーブルなどを置くのも自由だと言って、ルイは庭の中央にある白亜のガゼボに行くとアシェルを抱き上げて、ゆったりとした背凭れのある長椅子へと座らせた。
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