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 もう僅かも待てないとばかりに車椅子を動かしたアシェルに、足音も立てずエリクが近づいた。
「アシェル様、どちらに行かれるのですか?」
 大人しくプリンを食べていたと思ったら、急に焦ったように動き出すアシェルに疑問を抱くのは当然だろう。しかし買い物に行きたいアシェルは首を傾げるエリクにも気づかず、視線さえも向けずに買い物に行くのだと告げた。
「お買い物に行かれるのでしたら、もう少し後になさいませんか? 先程から空模様が怪しいので、もうじき雨が降りだすでしょう。お急ぎでしたら、私が代わりに買いに行きますが……」
「大丈夫。すぐに行って、すぐに帰ってくれば多少は濡れてしまうかもしれないけど問題は無いはずだから」
 それよりも早く甘いものを買いに行きたい。その衝動を抑えることができず、エリクが止めるのも聞こえぬままにアシェルは部屋に戻ってある程度の金を手に取ると玄関へと向かった。
「アシェル様! どうかお待ちを! せめて馬車をお使いください!」
 今すぐにでも飛び出していきそうなアシェルを必死で宥めすかし、エリクは馬車の用意を急かせる。夜会等に行くわけではないのだからと過度な装飾はされていない、少し小さめの馬車にアシェルを乗せて車椅子も積みこむと、エリクは使用人らに目配せをし、自らも乗り込んだ。
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