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「仕事の関係もあって、屋敷は本当に城のすぐ側なんです。公務もあるでしょうから頻繁とはいかないかもしれませんが、王妃様やジーノ殿とも会える機会が増えると思いますよ」
 貴族特融の優雅さを持っていても、ルイは王と国を守る第一連隊の連隊長だ。有事の際にはすぐに城へはせ参じなければならないのだから、屋敷が城に近いというのもなんとなく納得できる。しかしそのことでフィアナやジーノと会いやすくなったということに初めて気づいたアシェルは、思わず顔を上げた。視線の先には優しく微笑むルイがいて、彼は本当にアシェルを気遣ってくれているのだとわかり、ほんの少し罪悪感が湧き上がってきて俯く。
 結婚などしたくはないし、無理矢理婚姻を進められたことには未だに納得できていないが、こんなにアシェルを気遣ってくれる彼に冷たい態度ばかりを取る自分が悪人のようだ。
「あ、着いたみたいです。ね? 本当に近かったでしょう? 夜で外観はあまりわからないかもしれませんが、我が家をご案内しますよ」
 僅かに俯いたアシェルに気づいていないはずもないが、ルイは何を言うでもなく嬉々として馬車を降りるとアシェルをヒョイと抱き上げた。
「車椅子はアシェル殿の部屋に」
 アシェルを抱き上げたまま、ルイは後ろに従っているお仕着せの男に命じて歩き出す。てっきり馬車から降りたら車椅子に乗せてくれるだろうと思っていたアシェルは予想外のことに慌て、思わずジタバタと暴れた。もっとも、その程度のことなど連隊長には抵抗にもならないのか、歩みが止まることも無い。
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