51 / 249
51
しおりを挟む
「お兄さま、驚いておられるのはわかりますけれど、無茶をおっしゃらないでくださいな」
無茶を言っているのはどちらだとアシェルは勢いよくフィアナを見るが、彼女はそんな視線など痛くもかゆくもないとばかりに微笑み、やれやれと大げさに肩を竦めた。
「お兄さまったら。貴族の、それも侯爵家に生まれた以上、結婚は避けては通れぬと知っておられるでしょう? もちろん、私はお兄さまを大事にしてくださらないような方の元なら、その方が男性であろうと女性であろうと大反対しますわよ? お兄さまのお幸せが一番大切ですもの」
「だったらッ――」
「何が問題ですの? こちらのロランヴィエル公はお兄さまとさほど歳も離れていませんし、品行方正で文武両道。貴族のご令嬢方がこぞってダンスを申し込むほどの貴公子ですのに、性格は真面目で誠実。そんな方が、陛下に願いを叶えていただけるという貴重な機会でお兄さまをお望みですのに」
例え勇猛果敢な軍人であろうと、国王直々に願いを叶えてくれる機会など人生で一度あるか無いかだ。よほど無茶な要求でない限り叶えてもらえるという絶好の機会に願われるという、世の乙女たちが夢見て止まないお伽噺のような幸運であるというのに、何が不満だというのだろう。
無茶を言っているのはどちらだとアシェルは勢いよくフィアナを見るが、彼女はそんな視線など痛くもかゆくもないとばかりに微笑み、やれやれと大げさに肩を竦めた。
「お兄さまったら。貴族の、それも侯爵家に生まれた以上、結婚は避けては通れぬと知っておられるでしょう? もちろん、私はお兄さまを大事にしてくださらないような方の元なら、その方が男性であろうと女性であろうと大反対しますわよ? お兄さまのお幸せが一番大切ですもの」
「だったらッ――」
「何が問題ですの? こちらのロランヴィエル公はお兄さまとさほど歳も離れていませんし、品行方正で文武両道。貴族のご令嬢方がこぞってダンスを申し込むほどの貴公子ですのに、性格は真面目で誠実。そんな方が、陛下に願いを叶えていただけるという貴重な機会でお兄さまをお望みですのに」
例え勇猛果敢な軍人であろうと、国王直々に願いを叶えてくれる機会など人生で一度あるか無いかだ。よほど無茶な要求でない限り叶えてもらえるという絶好の機会に願われるという、世の乙女たちが夢見て止まないお伽噺のような幸運であるというのに、何が不満だというのだろう。
503
お気に入りに追加
1,005
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
やり直せるなら、貴方達とは関わらない。
いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。
エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。
俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。
処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。
こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…!
そう思った俺の願いは届いたのだ。
5歳の時の俺に戻ってきた…!
今度は絶対関わらない!
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
追放されたボク、もう怒りました…
猫いちご
BL
頑張って働いた。
5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。
でもある日…突然追放された。
いつも通り祈っていたボクに、
「新しい聖女を我々は手に入れた!」
「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」
と言ってきた。もう嫌だ。
そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。
世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです!
主人公は最初不遇です。
更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ
誤字・脱字報告お願いします!
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
婚約破棄された王子は地の果てに眠る
白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。
そして彼を取り巻く人々の想いのお話。
■□■
R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。
■□■
※タイトルの通り死にネタです。
※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる