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 連隊長を先頭に白銀の隊服を纏った兵士たちが一糸乱れぬ動きで入室してくる。色こそ臙脂と白金で違うが、近衛と同じ意匠の隊服は国王直属の軍であることを示し、戦場では纏っていたであろう同じ色の鎧を脱いだ彼らは、軍人らしく屈強な体躯をしている者もいれば、華奢とまではいかないが文人と言われても違和感がないほどに細身の者もいた。だが、ここにいるのは精鋭である第一連隊。見た目がどうであれ、一人一人が一騎当千の強者たちだ。
 そんな彼らが玉座の前まで進むと、腰に佩いていた剣を鞘ごと抜いて足元に置き、一斉に膝をついて頭を垂れる。ここまで一糸乱れぬ動きはいっそ芸術的で、アシェルは思わず考え込んでいたあれこれを忘れて魅入っていた。
「陛下、王妃殿下、我ら第一連隊総勢一万五千二十四名、ただいま帰還いたしました」
 綺麗な声だ。純粋にそんなことを思う。確か第一連隊の連隊長は王家と血縁関係にあるロランヴィエル公爵家の当主だったはずだ。確かアシェルよりも五つほど年下で、黒い髪に紅い瞳を持つ彼は軍人であっても無骨さはなく、貴族らしい優雅さを失わない。まるでお伽噺の王子様のように丹精な顔立ちも相まって、年頃の令嬢からは黄色い悲鳴を上げられることもしばしばあり、彼とダンスを踊ることを夢見る者も多いのだとか。しかし当の本人はそれが嫌なのか、貴族の子供たちが通う学園の卒業時や、数多く開かれる舞踏会でも誰とも踊ったことは無いらしい。本来なら断ることも難しい王族主催の舞踏会はわざと勤務を入れるほどの徹底ぶりだともっぱらの噂だ。もっとも、アシェルとて舞踏会を避けて通る性格をしているためさほど関りが無く、噂くらいでしか彼を知らないため真偽のほどを確かめる術はないが、それもどうでも良い。綺麗な声だなとボンヤリ思った程度で、アシェルはロランヴィエル卿に興味の欠片も無かった。田舎でひっそりと暮らしたいアシェルからすれば、王族と関係のある公爵家など徹底的に避けたいくらいである。
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