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「国王陛下と王妃殿下のおなりでございます」
その言葉に紳士は胸に手を当て、淑女はドレスを摘まみながら、一斉に頭を垂れる。グルグルと考え事をしていたアシェルも、反射的に胸に手を当て、頭を垂れた。
シュルリと響いた衣擦れの音は、王が纏う臙脂のマントか、それとも王妃が纏うドレスか。静まり返った空間に衣擦れの音だけが響いて、もう一度杖が床に打ち付けられた。その鈍い音を合図に、皆が一糸乱れぬ動きで顔を上げる。大広間の端にいるアシェルから玉座は遠く、モノクルで補われているとはいえ決して良いとは言えない視力では妹の姿は薄ぼやけてでしか見えない。久しく会っていない妹の姿をハッキリと見ることができないのは残念だが、話があると言っていたからには後で会えるだろうと気を取り直す――なんの話なのか恐ろしいことに変わりはないが。
頭の片隅でそんなことを考えていれば、杖を持った侍従が高らかに第一連隊の入室を告げた。皆の視線が扉の方へ向けられ、思わずアシェルもそちらへ視線を向ける。
その言葉に紳士は胸に手を当て、淑女はドレスを摘まみながら、一斉に頭を垂れる。グルグルと考え事をしていたアシェルも、反射的に胸に手を当て、頭を垂れた。
シュルリと響いた衣擦れの音は、王が纏う臙脂のマントか、それとも王妃が纏うドレスか。静まり返った空間に衣擦れの音だけが響いて、もう一度杖が床に打ち付けられた。その鈍い音を合図に、皆が一糸乱れぬ動きで顔を上げる。大広間の端にいるアシェルから玉座は遠く、モノクルで補われているとはいえ決して良いとは言えない視力では妹の姿は薄ぼやけてでしか見えない。久しく会っていない妹の姿をハッキリと見ることができないのは残念だが、話があると言っていたからには後で会えるだろうと気を取り直す――なんの話なのか恐ろしいことに変わりはないが。
頭の片隅でそんなことを考えていれば、杖を持った侍従が高らかに第一連隊の入室を告げた。皆の視線が扉の方へ向けられ、思わずアシェルもそちらへ視線を向ける。
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