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「お前は俺の部下だからな。それに家や王妃に関係なくとも優秀で、まだまだ年若い。だというのに、いつもの礼儀正しさも捨てて陛下に直接辞表を提出なんて、疑問に思うのも無理はないだろう。お前が馬鹿であれば特に気にも留めなかっただろうが、お前が何の理由もなく突発的にこんなことをするとは思えん。それも、軽い理由などではありえんだろう。……なにがあった?」
 これは異なことを。そうアシェルは胸の内で嗤う。確かにアシェルはサイラスの部下で、王妃の兄である以上それなりの礼儀は弁えている。それは間違いないが、逆に言えばそれだけだ。
 優秀? 馬鹿ではない?
 そんな評価はアシェルに最もふさわしくないものだ。これでも一応はノーウォルト侯爵家の子息。それなりに社交の場には出ている。そんなアシェルに下される評価は由緒正しきノーウォルトにふさわしくないものばかりだ。
 良くて突出するものは何もない平凡な男。悪くて、頭も運動も平均以下のボンクラ、といったところか。それをアシェル自身も否定する気は無い。だというのに、それなりにアシェルと共に過ごしてきたサイラスが、そんなアシェルには不相応な評価を下すなど、笑うしかないだろう。
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