煩わしきこの日常に悲観

さおしき

文字の大きさ
上 下
23 / 26
第五章

第二話

しおりを挟む
 「だからここの因数分解は3乗の公式を使ってこうなるって」
 「……わからん」
 3乗の公式ってなんだよ!2乗でいっぱいいっぱいなのに3乗って……
 「だからここの係数は3になって因数でくくって……」
 さっぱりわからん。ドイツ語でも聞いてる気分だ。
 「聞いてる?翔」
 「聞いてる聞いてる。にしても難しすぎんだろ……」
 「覚えるだけなんだからこれくらいできないと」
 「それができたら苦労してないんだよ…」
 「つべこべ言わずに手を動かす!」
 雫、厳しい……アンタ、人の皮を被った鬼だね! 
 「この問題終わったら英語に変えよっか」
 エンドレススタディ……
 「ほら、手を動かす!」
 やはり鬼だ。とりあえず終わらせるしかないのか……
 「ここはxについて降べきの順に並べて……」
 xとyとzがなんで一緒にあるんだよ!ややこしすぎるんだよ!なんて言ってられないからな。ここはxでくくって、この公式に当てはめて因数分解して…
 「できた!」
 後は答え合わせだけ。頼むから合っていてくれ……
 「よしっ!」
 正解だ!これで今日は数学、ジ・エンド!
 「なら次は英語ね」
 勉強、ネバーエンド……
 「5分くらい休憩しないか?」
 流石にぶっ通しはキツすぎる。
 「なら5分だけね」
 ああっ女神さまっ!
 「にしても翔、数学出来なさすぎ」
 「馬鹿にしやがって……」
 「それより、ビックリしたよね。南館の怪談が実は鹿島副会長のでっち上げだったなんて」
 「確かにな。聞いた時は流石に驚きを隠せなかったよな」
 そう、南館にまつわる怪談話はどうやら生徒会副会長である鹿島さんによる作り話だった。理由としては、人を近づけたくなかったとか。そう考えると結構溜まってたんだろうな……
 「でも他の七不思議に関しては違うって言ってたし、実際のところはどうなんだろうね」
 「さぁな。本当だろうが嘘だろうが、正直どうでも良いけどな」
 「出来れば嘘であって欲しい……」
 雫はホラーアウトだからな。っても、ありきたりすぎて怖さを微塵も感じないけど。
 てか、雫の部屋で二人きり。良からぬことを期待したけどそんな気配が一切無いのが何故か辛い……まぁ、お付き合いは清く正しく美しくって言うしな。これで良いんだろう。これでいいのか……?コレデイイノダ!
 「5分経ったから、英語やるよ」
 英語……何故日本人は自国の言語も使いこなせないのに他国の言語に手を出すんだ?まったく、ワケガワカラナイヨ。
 「これはなんて意味なんだ?」
 「それは………」
 そうして、俺たちは英語を2時間くらいして、お開きとなった。
 「明日はどう?」
 帰り際、雫がそう聞いてくる。俺の答えはもちろん……
 「全然大丈夫だ」
 それを聞いた雫は
 「なら明日も今日と同じようにやるから」
 笑顔でそう返した。
 「了解。ならまた明日な」
 「うん。また明日」
 勉強は嫌いだが、雫と一緒にいられるならいくらでもやれる。そう感じた今日この頃だった。なんて哲学者みたいなことを考えながら俺は自分の家へと帰っていった。

 「ところで翔、まだあの夢は見るのかい?」
 「どうした急に?」
 「いや、ちょっと気になってね」
 わざわざ夜中に電話かけてきて聞く内容じゃないだろ……
 「あれからだんだん頻度が上がってきてはいるな。それにだんだん内容もはっきりしてきたし」
 「内容はどんな感じなの?」
 「なんか俺がベッドに横たわってて、隣で雫が俺の手を握って泣きながら呼びかけてる、って感じだな」
 「成程ね」
 成程って、何がだよ。
 「てか、なんで今頃そんな事聞くんだよ」
 「別に、理由は無いよ。ただ気になっただけ」
 相変わらず変わった奴。
 「それより、今日のテスト勉強は捗った?」
 「まぁな」
 「最上さんはやっぱり教えるの上手?」
 「だな。的確でわかりやすいから助かってる」
 「今日の最上さんとのテスト勉強は楽しかった?」
 コイツ……
 「なんで知ってるんだよ」
 「いや、この会話の流れじゃ翔が言ったようなものだから」
 ハメられた……
 「お前、将来詐欺とかで逮捕されんなよ」
 「その心配は無いよ」
 何故か即答だった。つくづくわからんやつだ。
 「ならそろそろ僕は寝るよ」
 「俺もそうするか…」
 「なら、また明日ね」
 「じゃあな」
 そう言って、電話は切れた。にしても雨宮彼方という人物はわからなさすぎる。4年も付き合いがあるとは思えん。何ならファーストコンタクトさえも俺は忘れてるからな。近い様な遠い様な。謎多き奴だな。
 なんて考えているうちにもう深夜0時。俺もそろそろ寝るか。

 おきてよはやく

 はやくおきて

 お願いだからおきて
 
 何故夢の中でこれを雫が俺の横で言ってるんだ?内容から察するに俺が寝ていて、しかもただ寝ているのではなく、寝たきりの状態であると。考えれば考えるほど訳がわからん。夢には意味があるとかどうとか聞いたことはあるけど、あんまり信用できるとは思えないからな。
 「翔、聞いてる?」
 雫は少し怒り口調でそう言ってきた。
 「すまん、少し考え事、いや何でもない。それで?」
 「それで?じゃなくて、今日は何をするのかを聞いてたんだけど」
 「悪い悪い」
 「それで、考え事って?」
 「えっ?」
 「だから、考え事って何?」
 誤魔化すのが正解なのか?それとも素直に言うべきか?一応夢ではあるけど、雫は関係してるしな。でも、言って変な心配かけるのも違うしな。どうしたもんか。
 「早く言ってよ。言わないと色々と心配なんだけど」
 そう言われちゃぁ言わざるを得ないだろ。
 「実はな……」
 俺は雫に夢についてある程度の事を説明した。
 「……要約すると、翔が寝ていて横に私がいて、泣きながら起きてって囁いていると」
 「だな。高校入ってから急に見るようになってな。しかも最初はぼんやりとしか見えなかったのが最近になると鮮明になってきて……」
 「でも何も被害が無いなら気にする事も無いんじゃない?」
 珍しいな。雫はこういうのは信じるタチだと思ったけど。ホラーだけか?まぁ大体の人間はそんなもんか。
 「なら、深く考えるのはやめとくよ」
 「それが良いよ」
 こうやって早く雫に相談すべきだったのかもな。案外簡単に解決できたし。解決かどうかはわからんけど。
 「それで、今日はどの教科にするの?」
 そういえばそんな話をしてたな。 
 「昨日数学と英語やったから生物でもやるか」
 「なら生物ね」
 そういうわけで、今日の放課後は生物のテスト勉強だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

Re: 女装めしっ! スカートを履いても食べたいご飯がそこにあるっ!

冬寂ましろ
ライト文芸
渕崎夏稀は「男の娘」である。今日も学校へ行かず、男の人が入りづらい、女のお客さんばかりいるお店で、カフェめし、パンケーキ、フルーツパフェ…を食べまくる。そう……女装してでも食べたいご飯がそこにあるっ! 変わっていく夏稀君の心と食べっぷりをお楽しみくださいませ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

白衣とブラックチョコレート

宇佐田琴美
ライト文芸
辛い境遇とハンディキャップを乗り越え、この春晴れて新人看護師となった雨宮雛子(アマミヤ ヒナコ)は、激務の8A病棟へと配属される。 そこでプリセプター(教育係)となったのは、イケメンで仕事も出来るけどちょっと変わった男性看護師、桜井恭平(サクライ キョウヘイ)。 その他、初めて担当する終末期の少年、心優しい美人な先輩、頼りになる同期達、猫かぶりのモンスターペイシェント、腹黒だけど天才のドクター……。 それぞれ癖の強い人々との関わりで、雛子は人として、看護師として成長を遂げていく。 やがて雛子の中に芽生えた小さな恋心。でも恭平には、忘れられない人がいて─────……? 仕事に邁進する二人を結ぶのは師弟愛? それとも─────。 おっちょこちょいな新人と、そんな彼女を厳しくも溺愛する教育係のドタバタ時々シリアスな医療物ラブ?ストーリー!!

処理中です...