煩わしきこの日常に悲観

さおしき

文字の大きさ
上 下
19 / 26
第四章

第二話

しおりを挟む
 俺たちは昼飯を済ませ、昨日同様に2年7組に来ていた。
 「なら早速お願いできる?」
 今回の依頼者、如月先輩はそう尋ねてきた。
 「わかりました」
 俺は先輩にそう応える。その応えを受け、先輩は教室に入り、たむの所へ。
 「野中さん。1年生の明坂君が呼んでるよ」
 先輩がそう野中たむに話しかける。
 「わかった、ありがとう」
 たむは如月先輩にそう返し、こっちにやって来る。
 その瞬間だった。
 「翔くん久しぶり~!」
 そう言ってたむは俺に抱きついてきた。
 「同じ学校だったんだね。分かってたなら早く言ってほしかったのに」
 「最近知ったからさ、それで挨拶にと思って」
 「そうだったんだ。にしてもホント久しぶり。電話越しじゃないのは小学校以来?」
 「多分ね。それよりどう?学校生活は?」
 「普通に楽しいよ。翔くんは?」
 「正直に言えば面倒くさい」
 「まぁ気持ちはわからないこともないけど。あっそうだ、部活とかは?何かしてる?」
 「……」
 「どうしたの?」
 「一応してるはしてるんだけど、乗り気じゃないというか、不本意というか……」
 「なんて部活なの?」
 「SWC」
 「ルー・○ーズでもいるの?」
 「いや、簡単に言うとなんでも部的な感じ」
 「なんか聞いたことがあるような無いような……」
 「たむは何かしてる?」
 「私は麻雀部だよ」
 「そんなのあったんだ。てか、知ってたら絶対入ってたのにな」
 「だよね~。だから誘おうとしたんどけど」
 くっ…遅かったか……
 「他はどう?勉強とか、恋愛とか」
 「勉強は普通にやってるけど恋愛はあいにく出会いがなくてね、って高校生だからそんなんだろうけど」
 「あのたむを呼びに行ったあの人は?優しそうだけど」
 「あぁ如月くん?良い人なのは分かるけど特に、って感じだね」
 「たむは結構正直だな」
 「嘘ついても仕方ないから」
 「なら俺はそろそろ教室に帰るよ」
 「うんわかった。あっ、翔くんって何組?」
 「5組。この1個上の階」
 「うん、ありがとう。それじゃあね」
 そう言って、俺は自分の教室へと帰っていった。
 
 「それでどうだったわけ?」
 教室に戻るなり葉月がそう聞いてくる。
 「良い人とは言っていたけど、脈は無いな」
 「にしても翔、随分と仲良さそうだったね」
 少し低めのトーンで雫が聞いてくる。
 「一応いとこだからな。それに最近はよく電話してるし」
 「そう」
 雫は不機嫌そうに返す。どうしたんだ?急に態度が不機嫌そうになって。俺何もしてないよな?ちなみにというと、俺がたむと話しているとき、葉月、彼方、雫は廊下の隅から様子を見ていた。
 「とりあえず放課後にまた話しましょう」
 葉月がそう言うとほぼ同時にチャイムが鳴り響く。俺たちは各々、授業の準備を始めた。

 「さて、どうする?」
 葉月は俺たちにそう問いかけてきた。
 「野中さんは俺に対して悪い印象はないが、それと同時に脈も無い、ってことだよね」
 如月先輩が俺たちに確認を取ってくる。
 「俺が聞く限りじゃそんな感じですね」
 実際、たむも相当モテてるらしいからな。小学校の時なんか先生から告白されてたくらいだからな。普通に犯罪だってのに。全国の先生方、気をつけて。
 「それでどうする?というかどうしたいわけ?」
 葉月が改めて如月先輩に問いかける。
 「俺としては諦めたくはないけど、モチベがな……」
 脈無しとわかっているのは結構辛いだろうに……
 「明坂君、野中のタイプとかそう言うの知らない?」
 「タイプ……でもそういえば昔、勝つ人がかっこいいって言ってましたよ」
 確か、小学校5年生とかの時に言ってたはず。
 「勝つ人が……」
 「勝つって何にでもいいのかい?」
 今度は彼方が尋ねる。
 「それはわからないが、その時は麻雀だったな」
 「なら麻雀で勝つのが良いってことだよな」
 如月先輩?何言ってんの?急に。
 「俺は野中に麻雀で勝つ姿を見せて、告白してやる!」
 なんちゅう宣言だよ。普通に考えてアホらしい。
 「でも麻雀する人他にいるんてすか?」
 雫がそう尋ねる。確かに麻雀は3人、または4人必要だからな。
 「この中で麻雀できる人っている?」
 如月先輩は俺たちを使うのか。確かに仕込もうと思えばいくらでも仕込めるからな。
 「翔と最上さんかな?葉月さんは?」
 「私はできないわ。てか、二人はできるの?」
 葉月は不思議そうに尋ねてくる。
 「私は昔、翔から教えてもらってから最近もたまにやってるくらい」
 「翔は暇さえあればネットでしてるからね」
 うるせーよ。
 「なら如月先輩、翔、最上さんでやって、如月先輩を勝たせてあげるのは?」
 「一応聞いておきますけど如月先輩。本当にたむと付き合いたいですか?」
 「俺はいつだって本気さ」
 でた、カッコいいけど振られると超ダサいやつ。
 「1つ言っとくと、あいつ麻雀部の部員らしいですよ」
 「そうなのか?」
 「昼に言ってました」
 「なら野中先輩、翔、雫、如月先輩の4人でやるってのは?」
 彼方がそう提案してきた。
 「確かにそれなら八百長できるわね」
 「いや、八百長は必要ないよ。俺、麻雀練習するから」
 たむの言うとおり良い人な気がする。ここでちゃんとそう言えるのはカッコいいな。俺とは違って。
 「なら本番はいつにするわけ?」
 「すまないが明坂君、たむさんに都合が合う日を聞いてくれないか?」
 「まぁ、良いですけど……」
 「ならまた明日の放課後集合ね、今日はもう帰るわよ」
 俺たちは葉月の指示に従って、今日は解散した。 
しおりを挟む

処理中です...