煩わしきこの日常に悲観

さおしき

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第三章

第一話

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 …きて……や…
 聴こえる。
 …や…お…て…
 おぼろげだが確かに聴こえる。
 …ね……だ…ら……て…
 誰かが俺のそばで確かに泣いている。
 俺を求めるかのように。
 何故だ?誰なんだ?聴こえれば聴こえるほど、
疑問が増えていく。
 唯一つ、わかっているのは俺に向かって言っているということ。
 いったい、誰なんだ?何を言っている?教えてくれ。
 「ちょっと聞いてる!今大事な事話してんだけど!」
 葉月が、怒鳴った。
 「なんだよ、いきなり…」
 「いきなりじゃないわよ!人が、話してるのに船漕ぎ出すんだから」
 要は、葉月の話し中に俺は居眠りをしていたらしい。居眠りするほど眠くはないんだけどな。睡眠の質が悪いのか?確かに新しい枕は欲しいケド。
 「それで、話って何だっけ?」
 それを聞いた途端、葉月は大きな、それはそれは大きなため息をついた。
 「はぁ。もう面倒くさいから続きから。それで、このあとグラウンドに行くから。そこでまた詳しい説明があるって感じね」
 「了解。何か持っていくものってある?」
 彼方が質問する。その顔は楽しそうというか、嬉しそうというか。とりあえず、何か面倒くさいことになることだけは分かった。
 「とりあえず今日は大丈夫よ。そのことも行けば説明があるはずよ」
 「わかったよ」
 「なら、早速グラウンドに行くわよ!」
 そう言った葉月を皮切りに、俺たちは教室を出て、グラウンドへと向かった。
 「グラウンドで何をするんだ?」
 俺は彼方にそう問いかける。
 「何って、決まってるじゃないか」
 彼方は笑顔でそう返す。こんな感じでウヤムヤにするのがコイツの習性だ。意地が悪いのか面倒くさいのか。
 「それより翔、最近運動してる?」
 この質問を聞く限り、グラウンドではやはり体を動かすんだろう。
 「いや、まったくと言っていいほどしてないな」
 「だよね~。僕も全くだよ。最上さんは?」
 今度は雫に話を振った。
 「私も卒業してからあんまり…」
 雫も俺や彼方と同じ答えだった。運動って言っても体育の授業くらいしか機会がないからな。
 「それに初めてだから少し不安……」
 続けるように、雫はそう口にした。
 にしても雫が初めてのスポーツか……確か、雫は器械体操を昔してたっけ。つっても、グラウンドでするとなると、この情報関係なく絞れるけどな。
 この学校のグラウンドでは確か、ソフトボール部、サッカー部、ハンドボール部が交代で使ってたはず。どれもきついからやりたくないんだけどな。
 なんて考えていると、グラウンド前まで俺たちは来ていた。
 「ソフト……?」
 そう、俺の目の前、つまりグラウンドで行われていたのはソフトボールだった。
 「君たちがSWCか?」
 すると、格好から察するにソフト部員らしき人からそう声をかけられた。
 「そうよ!」
 葉月が意気揚々と応えた。いつも思うけどなんでコイツこんなに偉そうなんだ?
 「なら、こっちに来てくれないか?詳しい説明はそこでさせてもらう」
 ソフト部員の指示に従い、俺たちは後ろをついて行った。
 ついたその先はグラウンドの端の方だった。
 「今日は来てくれてありがとう。俺は1年の桐原漣。よろしくな」
 「私は…」
 そう葉月が自己紹介しようとしたら
 「君たちの事ならもう知っている」
 間髪入れずにそう告げた。
 「そう、なら自己紹介は不要ね。こちらこそよろしく」
 葉月はそう、言葉を返した。
 「早速だが説明を始めさせてもらう。3週間ってのは長いようであっという間に終わってしまう。だから今日から始めたいんだが、大丈夫か?」
 3週間?3週間後に何かあるのか?その説明は無いのか?
 「問題ないわ!なら着替えてくるから待っててくれる?」
 「あぁ。15分後にまたここに来てくれ」
 そう言って俺たちは部室へと戻っていった。
 「着替えるって何に着替えるんだよ?あと、このあと何すんだ?」
 「何って決まってるじゃない。体操服よ、体操服」
 「おいおい、まさかソフトボールするとか言うんじゃないんだろうな」
 「まさかも何も、ソフトボールするに決まってるじゃない」
 呆れた感じで葉月は俺に告げた。
 「ちょっと待て!俺はそんなの一言も聞いてないぞ!」
 まったくだ!俺は何も聞いてない!
 「あんたが寝てるからじゃない」
 「マジか……」
 まさか俺が寝ている間にそんな大事な話をしてたなんて…言ってくれたっていいのに……あんた人の革を被った鬼だね!
 「とりあえず今から着替えるから、男子は廊下ね。もし覗いたら……」
 廊下で着替えさせるとか……やはり鬼だった。
 そんな感じで俺と彼方は廊下、葉月と雫は部室で、体操服に着替えを済ませ、再びグラウンドへと向かった。
 
 
  
 
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