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悲劇

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事件が起きた。
徐々にシェーラの結婚相手が絞り込まれ、五人の候補のうちの誰がいいか、シェーラの意見も聞こうとなった頃のことだった。

シェーラの両親、伯爵夫妻が乗る馬車が何者かに襲われ、二人とも殺されたのだ。
護衛も全滅だった。
犯人はつかまらなかった。
身につけていた貴金属があらかた奪われていたことから、金目当ての強盗だろうと捜査に当たった警邏官は言った。

悲しみにくれるシェーラをよそに、事態は急速に動いていった。



まず、伯爵死亡によりシェーラの婚約が白紙に戻った。
そして、弔問の名目で訪れた親戚達が、土地や権利を少しずつかすめ取っていった。両親の死を悲しむシェーラを慰める振りをしながら、言葉巧みに少しずつ何かを奪い取っていった。

先の見通しの立たない伯爵家に不安を感じたのか、使用人達もかなりの数が辞めていった。
そうして気づけば、たった一年で伯爵から子爵に位を落としていた。

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